探偵日記

探偵日記 9月21日水曜日 曇り

本当によく降る。今日は久しぶりの事務所。特にやることもないけど生まれつき貧乏性で、長く休めない。といっても、昨日はあの大雨の中、神田まで所用で出向いた。神田は僕が初めて「探偵」になったところで、独立して最初に事務所を持ったのもここだった。新聞の募集広告を見て興味津々で訪問した事務所は西口のオンボロビルの3階にあった。面接してくれたのは40歳ぐらいのなかなか渋い男性だった。へ~いい男だな。というのが僕の第一印象で、こちらの好意が通じたのか即決だった。後で分かったことだが、所長さんが僕に好感を持ってくれたというより、喉から手が出るくらい人出が欲しかった。らしい。彼が独立開業して僕が第1号見習い調査員だった。しかし、前にも書いたが僕はわずか半年で首になった。実は、その前に、帝国興信所に勤務する叔父の手伝いである程度の知識があったので、純粋な探偵事務所出身の所長さんに僕のほうでアドバイスすることもあって、重宝された。と、勝手に思っている。その証拠に、首にした僕を長いこと下請けで使ってくれた。探偵としての能力はともかく、人当たりが良く如才なさには自信があった。学生の頃、色んなバイトをしたが、その中に、ポーラ化粧品のセールスがあり、所属する営業所で売り上げトップになったこともある。ただ、辛抱できない性格ですぐにやめたが。----------