探偵日記

探偵日記 11月07日月曜日 晴れ

新しい週が巡ってくるのが早い。5時50分、タイちゃんの散歩に出る。夏は4時前から騒ぐのに、少しづつ遅くなり、この季節は6時を回ることも少なくない。犬の体内時計に合わせて人間の僕も生活のリズムを変えなければならない。今日は元気に1時間10分歩き、珍しく嫌がらずに帰宅した。僕は1時間ベッドで横になった後、朝ごはんを食べて事務所へ。今日から銀座で、30年間お世話になっている顧問税理士のK先生の個展が始まる。趣味が高じて画伯になった。僕はシニアのプロゴルファーになろうかな。パー100ならば。

ロマンチックな恋の結末 6

依頼人と会って調査の依頼を正式に引き受けた翌日、日曜日で、恒例の買い出しに伊勢丹に行く。グレープフルーツやお味噌を買って(ああそうだ)と思い、明日から始まる尾行調査のマルヒの自宅を内偵することにした。内偵といっても近所を聞きまわるわけではない。いわゆる「地取り」で、調査をスタートさせる現場を、何となく見る程度である。「家を見る」ことは重要で、一見するだけで、その家庭の状況が判り、ともすれば、そこで暮らす人々の性格や思考まで推測できることもある。
田園調布の教授宅は、純和風の2階建てで、びっくりするほどの豪邸ではないが、当主の職業や人となり、また、依頼人である妻の心構えが感じられた。決して華美に至らず何気ない所にお金をかけていた。大通りから少し入った閑静な立地で、駅まで徒歩で5~6と、交通の便も悪くなかった。「主人は歩いて駅まで行き、渋谷で山手線に乗り換え、上野から新幹線に乗ると思います。」そうならば、家を出たマルヒは大通りを右折するはずだ。調査員は4名、うち一人は車両係で、最寄の駅でマルヒを見送ったら事務所に帰って来ることになっている。間違っても見落とす心配のない尾行だ。----------