探偵日記

探偵日記 12月01日木曜日 雨のち晴れ

最近タイちゃんの調子が良くない。今朝も僕を起こしたのは6時前、外に出ると本降りの雨だった。例によって高架下へ行くがとぼとぼと歩き、小一時間たってもウンチをせず、帰りたがる。ところが家に入るとご飯に飛びついたので少し安心する。9時、家を出て地方からのご依頼人と待ち合わせをしている帝国ホテルへ。11時半、事務所に戻る。タイちゃんだけじゃあなく僕も熱っぽく何となく怠い。なにしろ、僕たちは同い年だから。

ロマンチックな恋の結末 17

方々に武家屋敷はあるが、角館のそれは全く印象を異にする。例えば、山口県の萩など下級武士らが住んでいたと思われる長屋で、塀は子供でも飛び越えられるぐらい低く、(大丈夫かな)と、思うぐらい不用心である。ところが、角館は家老職以下、要職についていた者たちの屋敷群でかなり見ごたえがある。砂利道の両側に鎮座する家々はみな豪壮で堅固であった。教授は一通り見物した後、秋田市内のホテルに戻るため駅に向かった。喉が渇いたので冷たいものでも。と思って、喫茶店を探す。先刻、一杯です。と言って断られた店を避けて、駅から少し離れた店に行くと、幸い座れる余裕があった。やれやれと思いながら隅の席に着き(コーヒー)を注文した。

朝早く出たし、良く歩いたので少々くたびれたかな。などと考えながら運ばれてきたコーヒーをブラックで飲み、先ほど見物した屋敷のその時代の情景を想像し、角館の昔に思いを馳せていると、思いがけず、横の席座っている婦人に声をかけられた。「あの~先ほど駅前の喫茶店で入れなかった方ですよね。」最初はまさか自分に向けたものとは思わなかったが、声のほうをに顔を向けると、年のころは40代後半と思われる美しい女性が微笑んでいた。------