探偵日記

探偵日記 12月16日金曜日 晴れ

今日は風も強くなり寒い一日になる。との予報で、少し厚着して家を出たが陽差しもあってそれほどではないように感じる。年賀状もあと100枚を切って見通しが着いた。ところが、押し迫って少々複雑な案件が入り忙しくなりそうである。去年ほどではないが終わってみればいつものような状況で可もなく不可もない。昨日は、ひと仕事終わって雀荘に行き、座った途端事務所から電話がかかり、「F弁護士が連絡をくれと言ってる」との由。面子に断わって電話をすると「今、ご依頼人がいらっしゃってて打ち合わせがした」とおっしゃる。麻雀どころではない。(すぐ参ります)と言って、タクシーで日比谷まで駆けつけた。探偵は自分の時間など有って無いようなもの。(笑)

ロマンチックな恋の結末 26

考えがまとまらないまま新幹線は終点の東京駅に到着。山手線と東横線を乗り継ぎ田園調布の自宅に向かった。駅を降りて勝手知ったる道を急ぎ自宅について驚いた。道すがら自宅に何度か電話したが留守電になるばかり。温厚な教授も些か腹が立ってきた。己の非は非としてこんな仕打ちは無いだろう。弁護士が中に入るのは良しとして、夫の電話を拒否するなんて何を考えているのか。しかし、怒って居られたのはそれまで。門扉を開けようとするが開かない。見ると大きな錠前が取り付けられている。よし。と思って塀を乗り越えようとしたら鉄線が張り巡らせてあり、無理して乗り越えようとしたら傷だらけになってしまうだろう。門前で呆然として立ちすくんでいると、隣家の主婦が出てきて「あら先生どうなさいましたか」と聞いてきた。

いやまあ。と意味不明の言い訳をして、早々とその場を退去した教授は再び駅に戻り、まず今夜の宿を確保した。ここに至って、妻や娘の考えがただならぬことに気づき、事の重大さを認識したのである。ホテルのチェックインを済ませ部屋に入り、改めて封書を取り出し、恐る恐るその法律事務所に電話をする。上品な声で(○○法律事務所でございます。)応答されたが、教授には、その声さえも自分の敵に思えた。-----------