探偵日記

10月 31

探偵日記 10月31日火曜日 曇り

10月も今日で終わり、時間の流れは速い。数日前から巷におかしな恰好をした男女を見かける。ハロウインとか。要するに欧米の「収穫祭」を日本でも祝おう。というこたらしい。平和だし、日本人は本当に心優しい民族だと思う。
新しい仕事が入った。身元調査だが調査方法としては尾行が中心となる。費用の総額は500万円。悪くないが、現場が宮城県の仙台市。東京や近県で行う調査と違って「実費」が嵩む。仮に7日間調査員を派遣すると、旅費交通費、宿泊費、食費、等々。まさか東京ナンバーの車両で張り付くわけにもいかないからレンタカーも借りなければならない。また、何より時間を要す。例えば、朝家を出たマルヒをあっというまに見逃したとする。いわゆる(出コケ)だ。そうするとそのひ1日調査員らは無為に過ごすことになる。(てめえら失敗したら指詰めてもらうからな)と言えない堅気の辛さがある。(笑)

結婚 2-4

調査を開始した。一通りの公簿(戸籍や住民票のこと)を取り寄せ本人の申告に虚偽の無いことを確認し、住所地や実家周辺の内偵(聞き込みのこと)も終えた。総合的に見て特に懸念すべき風評も聞かれなかった。身長173センチ、中肉、眼鏡の使用も無く四肢共に異常は見当たらない。企業内組合には加入しているものの、思想は中庸、まあ、平均的なサラリーマンといえた。但し、大学時代を含め社会人となってからも親友と呼べる者はいなかった。僕は、最後に、マルヒの勤務先を訪問した。あらかじめ人事部長にアポを入れておいたので、人事部長は応接室で待っていてくれた。勤務態度や協調性など「申し分ありません」部長は誉めそやす。完全無欠とまで言う。僕はそんな部長に迎合して、いちいちごもっともという顔をした後でこう聞いた。(ところで部長さんにはお嬢さんいらっしゃいますか)「居ますよ」(じゃあ仮にお嬢さんのお相手だったらどうですか)一瞬部長は絶句した。正直な人だ。僕は、(変な質問をしてすみませんでした。お忙しいところお時間を割いていただきありがとうございました)と、丁重に言って部屋を出た。
身元調査で、マルヒの性格を詳細に判断するのは難しい。調査員に対し、聞かれる誰もが必ずしも本当のことは言わない。いい人、真面目な人、当たり障りのない返事が返って来る。しかし、本件のマルヒの場合、数日尾行調査を行った結果、色んな場面で「吝嗇」を窺わせる言動を把握した。いわゆる、常軌を逸した(ドケチ)であった。僕はこの調査の少し前、やはり女性からの依頼でバツイチの男性を調べたことがある。定義にそって離婚した元妻と面談して離婚理由を聞いた。彼女曰く、「主人は私に生活費として5千円くれるのです。そして、そのお金が無くなるとまた5千円くれるのですが、前の5千円の使途を詳しく書いてレシートを添えて出さなければなりませんでした。ところが或る日のこと1円間違っていたのです。雪の降る寒い夜でした。怒った夫は普段着の私を外にだし玄関の鍵をかけたのです。」
今回の調査について、僕は所見にこう書いた。(本人は真面目な会社員で能力も普通である。特に強調すべき瑕疵は見当たらないが、性格の一片に男子として品格を欠く面が見られ、婚姻には一考を要す)どうしても結婚したいと言い張る嬢さんと、ご両親に前段の話を聞かせて依頼人宅を辞去した。-------