探偵日記 06月27日火曜日 曇り
朝夕一時的に雨が降るそうだが、僕が家を出た時は大丈夫だった。独身の僕(ウソ)は出かける途中クリーニング屋さんに寄って、ズボン、Yシャツ、ベストなどを出して駅へ。クリーニング屋の主やその他の人たちは(可哀そうにあの年になって独り者か)と憐れんでくれているだろう。そんな妄想をしながら事務所へ。
昨日「総会屋」について書いたので、その続き。その後、商法改正で彼らの活躍する場所が狭まったが、当時は少し小才の効いたヤクザや右翼、そして興信所の調査員や探偵も競って仲間入りし、中には大物と言われ一世を風靡した者もいた。昨日書いた僕の先輩が師事したS氏も超のつく大物だった。総会屋とは、上場企業の株主に与えられた権利を行使し、その企業に物申す人のことを言い、彼らは、極端に言うと、その会社の株式1株を得て晴れて株主となり、色んないちゃもんをつけて「賛助金」と称す金員を受けるわけだが、例えば、ある企業の人事で、部長職の人を取締役に抜擢しようとして、とりあえず取締役会で決定。次に、株主総会で認証してもらう運びとなるわけだが、ここで総会屋さんの出番となる。仮に、その部長さんが銀座のホステスに入れ揚げていたとする。そんな噂を聞きこんだ総会屋さんが、株主総会の場で「異議あり」と叫んで、その部長の資質を問いただしたら折角の昇進も水の泡になってしまう。
したがって、前もって会社の総務課辺りにそれとなく匂わせておく。すると会社側は大慌てでもみ消そうとする。派閥人事がとん挫すればその派閥の首領は困るし、そんなことで総会が長引けば議長(代表取締役が成ることが一般的)の手腕に汚点が付く。とにかく、総ての議題に対し「賛成」とか「異議なし」の声に包まれて速やかに終わらなければならないのだ。シャンシャン総会。を実現するべく、僕も、先輩に日当を貰い、ただ拍手するだけの総会に何度か参加した。古き良き?時代だった。