探偵日記


2020年08月23日 日曜日 曇り時々雨




今日こそ家でゆっくり休もうと思っていたが、生来の性分はいかんともしがたくついふらふらと出てしまった。新宿駅に着き(さあどうしよう)と途方に暮れる。ちょっとおなかも空いたので喫茶店に入った。




開業医に関する素行調査




尾行したマルヒは東京駅の新幹線中央改札付近で同年配の男性と会う。調査員から「母親の彼氏と会いました」との連絡が入る。犬鳴は(なるほどやっぱりな)と合点した。母親の愛人は北陸地方に住むサラリーマンである。たまたま四国のほうに単身赴任していた時、看護婦の母親と出会い不倫関係に陥った。その後、男性が本社勤務になり遠距離恋愛となったが、なかなか会えない環境が二人をさらに燃え上がらせたのだろう。電話の会話など聞いているこっちのほうが恥ずかしくなるような際どいものだ。




一方、その後の調べで、依頼人を手紙で脅してきた男は、かってその男性と同じ会社に勤務していたことがあり親しい間柄といえた。男は興信所の正社員ではなく仕事があるときだけ行くフリーの調査員だった。興信所にはよく見られる現象で、若い頃の犬鳴もそんな時期があった。独立開業したものの仕事がないとき、数社の興信所に出入りして、1件数千円で下請けして凌いだものだ。というわけで、男のおおよその力関係も計れた。結論から言うと(大した奴じゃアなかった)のだ。ここで読者の皆さんに少し説明すると、「探偵」と、興信所の「調査員」とでは、立ち位置が大きく違う。興信所の調査員は固定給が無い。1件数千円(犬鳴の頃は平均3000円程度だった)しかならず、いきおい量産しなければ生活が出来なかった。1ヵ月に30件こなす調査員は一人前といわれた。ーー