探偵日記


2020年08月24日月曜日 晴




昨夜、9時前に帰宅したが読みかけの本が面白く、結局全部読み終わって就寝。今朝はちょっぴり寝不足気味でご飯もおいしさは半分だった。10時前新宿に着く。本は「柚月裕子の狂犬の目」というタイトル,単行本から文庫になったので早速購入した。何も高い安いではない。それなりに動いているので持ち運びを考えて、いざという時はおしりのポケットに入る文庫がちょうどいいからだ。作家は名前の通り女性だが、男社会を描くことにかけては抜きんでた才能があると思う。もうほとんど読んだが、最初に読んだ定方という主人公の検事ものですっかり虜になった。僕も今三作目に挑戦しているが、残念ながら出版社が相手にしてくれない。( ノД`)シクシク…




開業医に関する素行調査




男は自分の名前や住所を偽りなく書いているので依頼人を脅して金をゆすろうとは思っていないようだ。たんに、多分探偵を雇って際どい調査をさせている依頼人に対し圧力をかけたつもりであろう。しかし、犬鳴は自分に対する挑戦と解釈した。この頃の犬鳴は自分で言うのもなんだが、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあって変な自信を持っていた。或る日、彼が時々立ち寄る興信所のまえで男と接触、依頼人に出した手紙の真意を質した。男は何を勘違いしたか震え上がって「申し訳ない。もう二度と致しません」と言う。犬鳴は、な~んだ。と思いいささか拍子抜けしたが、録音した男とのやり取りを依頼人に聞かせひとまず安心してもらった。




また或る日のこと。依頼人から「出て行っちゃった」という連絡を受けた。聞いてみると、昨夜帰宅したマルヒは二人の子供を座らせて(お父さんは今日限り君たちのお父さんをやめる)と言って、唖然とする子らにそれ以上の詳しい説明もせず、翌朝玄関に横付けしたトラックで風のように去ったという。とにかく自分の私物は一切合切運び出し、依頼人が(靴を一足置いて行ってよ)と哀願したが無視されたらしい。その日の夜、診療が終わった後尾行してみると、看護婦を伴い東京湾に面した超高層マンションに帰って行った。




最後の報告のため何時もの喫茶店で会った依頼人は、さばさばした感じで(ね~犬鳴さんどう思うお兄ちゃんのほうは何となく理解したみたいだけど下の子はきょとんとしてました)と言う。犬鳴も満一歳で両親に捨てられたが、終戦直後の混乱期であり、マルヒのように若い愛人が出来たから(お父さんをやめた)わけではない。だから両親を恨んだり憎んだりしたことはないが、将来この二人の子は何を思うのか。--こうして約半年続いた、犬鳴の記憶に残る素行調査は終了した。