探偵日記

探偵日記 04月20日金曜日 晴れ

今日もいい天気。朝家を出ると熱気を感じる。少しゆっくりしようと思っていたら、知らない番号から僕の携帯に電話があり、ご婦人の声で「相談したいことがある」とのこと。大急ぎで支度をして事務所へ。約束の時間より早く来たらしく、僕が新宿御苑前の駅に着くタイミングで、事務の高ちゃんから(いまいらっしゃってお待ちです)との連絡が来る。事務所に着くと応接室にきちんとした身なりの真面目そうな女性が座っていた。相談の内容は「探偵」が興味を抱くようなものではない。それでも丁寧に説明してお帰り頂いた。13時、上海からご依頼人がやってくる。

調査会社あれこれ 2

昭和44年10月、家で寝っころがって読売新聞を見ていたら(探偵見習求む)といいう小さな記事が目に入った。のろのろ起きだし机に向かい、かねてより用意して有る履歴書に書き込み、午後一番で面接に行く。前もって電話で場所を聞いていたのでその通りに向かう。神田駅西口から美土代町に向かって真っすぐに進み、大通りに出る手前の路地を右折、すぐ右側のビルの3階に、その探偵事務所はあった。しかし、建物の前まで行って余程引き返そうかと思った。ビルとは名ばかり4階建てのモルタル造りの建物で、勿論エレベーターなぞという洒落たものは無かった。とにかくみすぼらしいのだ。ちょっと迷った末に、(阿佐ヶ谷から折角来たんだから)と、思い直し3階の1室のドアをノックする。若くてきれいな声が「どうぞ」という。どんな場合に於いても女好きの僕は胸を高鳴らせて入室。(先ほどお電話した者ですが)と言いながら部屋を見回した。さっきの声の主。真四角な顔で色黒、年齢50歳前後か。どうも入歯くさい。ガッカリしてもう一人の男を見る。こちらは40歳位。なかなかハンサムで小太りの体で椅子に座っている。事務所の広さは6~7坪か。木造りの古ぼけた机と椅子がが5つ。隅に形ばかりの応接セットがあり、僕はそこに座らされた。ポケットから履歴書を差し出す。小太りの男性が受け取りざっと見て、「ねえ君今日から働ける?」と聞く。僕が出した履歴書には(未経験)と書いてある。えッと思ったが、ということは採用されるのだろう。僕は元気な声でハイっと応えた。この時僕は25歳。----------