探偵日記

探偵日記 03月03日火曜日 晴

昨日と打って変わって、暖かいいい日だった。(こんな日にゴルフしたいな~)と思うが、世の中そうは上手くいかない。
11時ころ家を出て、14時に京王線の「千歳烏山」で人と会う。そのあと、新宿に戻り16時に依頼人と会って17時過ぎに雀荘へ。夜は仲間と会食し、23時帰宅。いいことも悪いことも無い平凡な1日だった。

新宿・犬鳴探偵事務所 3-03

噂では、彼は元ヤクザで、関西の老舗の某組の幹部だったとか。前科11犯らしいから半端なヤクザではなかろうと思う。浅黒い顔(後で知ったがその頃は肝臓がんがかなり進行していたようだ)に、金壺眼、髪をオールバックにして、運転手付きの高級車にふんぞり返って乗っている姿は何処から見ても現役のそれであった。犬鳴はそんな彼を尊敬しないまでも好感は持っていたし、或る意味に於いて認めていた。主管が警察庁ということもあって、会員の中にさすがに本物のヤクザはいなかったが、「元」やまがいはけっこういた。この頃までの探偵は、それで十分まかり通っていたような気がした。
 まず、元、丸の内署長のK会長が挨拶し、その後、来賓が祝辞を述べた。主管のキャリアであろう、若いが課長だという。次に、名前は伏せるが自民党の代議士が乾杯の音頭を取った。その後主だった来賓の挨拶が続き、宴会が始まり、各々名刺交換が行われた。犬鳴以下理事たちは飲食もひかえホスト役に徹した。(さあ、これからは大手を振って仕事が出来る)というのが出席した業者全員の気持ちで、次は、業法を作ってもらおう。と意気込んだ。やがて閉会となり、犬鳴達ホスト役は、残った会員たちとともに、慰労会のような雰囲気となって、前科11犯を中心に集まって互いの労を労った。誰ともなく、彼に(先輩ご苦労様でした)と言ったとたん、彼は号泣した。よほど嬉しかったのだろう。世間の裏街道を歩く人生から、まだ、胡散臭さは残るものの「探偵」という職業を得て、今まさにその職業が正業として認められ、その功績の一端を担ったのである。・・・・・・・・・