探偵日記 11月15日木曜日 晴れ
かなり寒い朝。少し早めの朝食を摂り家を出る。10時半、黒川英夫画伯の個展を表敬訪問。なぜならば、画伯は我が貧乏事務所の顧問税理士でもあり、三十年以上お世話になっている。あと3か月で満九十歳になるという画伯は矍鑠としてお元気だ。今回の目玉(こんな表現をしていいのかどうかわからないが)は、ご自宅に近い鎌倉の稲村が埼海岸の砂鉄と炭で描いた「汐の香」という大きなものだった。なるほど、近づくと潮の香りがするようだった。僕も小さい頃は絵が好きで良く書いていた。育った山陰の海岸の村は素材には事欠かなかった。山はきれいで優しく海は荒々しいが夕日の美しさは比類なきものだったように記憶する。
仕事の話。今外国人の尾行をやっている。マラ来日したばかりで東京の地理が良く分からないらしく、電車を乗り違えたり道に迷ったっり右往左往する。別の意味で調査員も振り回されているようだ。まだ数日の調査だがマルヒは「嘘つき」である。きっと、育った環境はよろしくないところなんだろう。