探偵日記 11月16日月曜日 晴れ
今日は咳が酷い。電車の中で止まらなくなり周りに迷惑だからいったん降りる。しかし、依頼人と面談の時は困る。だから、会う前にのど飴をなめておくが不安である。
昨日、46歳の男が83憶円を詐欺って逮捕されたニュースを聞いた。わずか数か月で集めたというから凄い。だけど、1ヵ月1割の配当を約束し、それを信じた人たちがいるのも驚きである。騙す人と騙される人、僕は前者になったことはないが騙された経験は豊富に持っている。昭和の終わりころ、大学の同期の人に2000万円貸したが返してくれない。という相談があった。僕はヤクザじゃあないから俗にいう「切り取り」(取り立て)はやらないが、顧問先の社長に頼まれ、相談生きた社長ともゴルフをやった顔なじみだったので義侠心(そんな大げさなものではないが)が沸いて引き受けた。もう一つの理由として、相手の男が某製薬メーカーの創業者の息子だったこともあって簡単に考えた。とにかく調子のいい男で、育ちもいいから何だか憎めない。何度か会ううちすっかり乗せられて、なけなしの小遣い300万円を貸してしまった。「巨人の桑田選手の自宅の売買を任され明日契約」だと言う。ああそれなら。と思ったのだが、真っ赤なウソだった。以後、手を尽くして回収の努力をしたが、生来の怠け者の僕はすっかり諦めて、今となっては時効である。それ以外にも付き合っていた友人知人にお金を貸して悔しい思いを沢山している。(調査は転ばぬ先の杖です)依頼人に偉そうなご宣託を言うとき少し心が痛む。