火曜日、晴。夜半から朝方にかけて猛烈な風が部屋の窓を叩き睡眠を妨害されて、午前2時、誘眠剤飲んでやっと寝た。否、真相はベッドで本を読んでいたためで風のせいではない。言い換えれば、風の音ごときで眠れないようなひ弱な精神構造でもない。とある居酒屋で常連客の若い青年が「僕今までまともな職業に就いたことがないんです。探偵ってどうなんですか」と聞く。僕のことをよく知っている店主は「福田さんのところは大手だよ」とお世辞。探偵事務所は大手もくそもない。現在、首都東京の探偵事務所は860社ともいわれるが、その大半は一人1社で個人経営以下の規模である。そういう意味では、一時、30人近い調査員を抱え、50年やっているのだからまるっきり嘘でもない。10数年前(探偵業法)が出来たおかげで、誰でも、極論すれば居酒屋のこの青年だって、所轄の警察に届け出をすれば一丁上がりで、めでたくにわか探偵が誕生する。再び店主「探偵ってさ~ほら浮気の調査が主で尾行っていうの、あれだよ」と知ったかぶりする。 僕はそれ以上のコメントを言う気にもなれず笑って聞いていたが、要するに、出来立ての探偵は、経験もなければ技術面でも劣る。そんな探偵でもちょっと要領のいい人なら尾いてゆくことぐらいできるだろう。だから、浮気調査に特化するのである。