借り逃げ 2

探偵日記 6月28日金曜日晴れ

昨夜少々飲みすぎて今朝の散歩は交代してもらった。11時、日本橋の会社を訪問。社長とランチの約束があった。お昼にはまだ時間があるので社長室で四方山話をしているうち、壁に飾ってある写真6点に目がとまり見つめていたら、「僕が撮ったものだ」と言う。僕はてっきりプロの写真家の作品だと思っていたので驚いた。すると社長は処理棚に整理してある200枚以上の中から数点を取り出し見せてくれた。どれも素晴らしい出来栄えで、僕が(社長、個展でも開いたら如何ですか)と言うと、社長もまんざらではない様子で「しかし、誰が見に来てくれるかな~」と応じる。20年以上のお付き合いだが、こんな趣味を持っていたとは、実は、若くして亡くなられた社長の実兄は有名な写真家だった。根っからの商人と思っていたが、社長にも芸術家のDNAが受け継がれていたようだ。僕に、役者の素養が有るように。エッ。

借り逃げ 2

08年(平成20年7月)ある経済紙がこんなニュースを載せていた。「FIFA電通疑惑と新潟精密・未公開株疑惑の接点」と題する記事を読むと、スイスの検察当局が日韓ワールドカップの放映権を一手に握るISMM(インターナショナル・スポーツ・メディア&マーケッティング)の経営幹部による不正が暴かれており、当時の電通専務で担当者の関与が取りざたされている。I社からその担当者が関係する会社に約4億円の裏金が振り込まれているそうだ。

僕は良く知らなかったが、日本にも放映権ビジネスというものが暗躍し、かなりの利権が存在するようだ。一方、新潟精密を巡る未公開株事件にもその担当者が絡んでいるという。今回の調査のマルヒは僕が思っていた以上の大物らしい。彼の周りには大きな資金が乱れ飛んでいる。と言っても良さそうだ。したがって、00チャンから借りた7000万円など彼にしてみればはした金だろう。返せないのでも、返したくないのでもなく、失念しているのではないか。とも思えた。もしかしたら、弁護士から内容証明を送るだけで解決するのかもしれない。

僕は良く思う(人間の欲望は果てしない)と。なに人も一旦懐に入ったお金を失うことに抵抗する。恐らくこのマルヒも色んな口実をもうけて返済を渋るだろう。そうさせないためにも調査は必要である。えてしてこういう人物は、ひと言、ある一点を突かれただけで観念することが多い。探偵はそれを探し依頼人に報告しなければならない。--------