探偵日記 2月25日火曜日晴れ
小春日和、予報でも三月上旬の陽気だと言っていた。久しぶりにコートを脱いで事務所へ。今日は給料日、僕も少しは貰えるだろうか?
昨夜、阿佐ヶ谷のフレンチ「ラ・ボール」で食事。ビールと、冷奴、焼き魚、〆にとんかつライスを食べて、これも久しぶりに、天国に一番近いスナック「ほろよい」へ。もうすぐ喜寿を迎えるママ、若いホステス雅代55歳。今日はお休みなのに半客として飲んでいるチーママみほの63歳。客は、82歳の大地主Yさん、その隣にママより年上って噂のS嬢、その友人T子68歳。昔は女優だったのかと思うぐらい美人のTさん72歳。そのほかいずれも年金生活者の面々、中に、見知らぬ人が二人、ママが僕に紹介する。「こちら今日で2回目なんですが、ほら、あのポスターの歌手、真木ゆうじさんよ」と。そういえばポスターが貼ってあった。年の頃は60歳位か、調子の良い男でこっちもつい乗せられてCDを5枚買ってサインをしてもらう。僕が(我が家の家宝にする)と言うと、大喜びして、マネージャーという80歳ぐらいの男性ともども握手を求められた。歌手は、そのあと、自分の持ち歌を5回、居合わせたご婦人6人とデュエット。大サービスである。
10時過ぎ、(ママお勘定)と言って見るが、何時ものように知らん顔され、他のおばあさん達からは大ブーイング。リクエストしていないのに次々歌を入れられる始末。振り切って、逃げるように店を出たのが午前1時、あつかましい、恥知らず、しぶとい、自分勝手、形容しがたいほど可愛い老嬢達におもちゃにされた春の夜だった。そして、散々触られたが最後の一線だけはかろうじて死守した。