探偵日記

探偵日記 4月17日金曜日 晴れ

今日も朝からいい天気で、気温も五月の下旬並みだという。しかし、大気が不安定で急に雨が降ったり、雷が鳴ったりすることもあるらしい。11時、六本木の法律事務所を訪問。調査を依頼される。行きは大江戸線だったが、何だかだるいので帰りはタクシーに乗って事務所へ。なんでこんなにけだるいのか?タクシーに乗って気付いた。花粉症のクスリ(ストナリン)を服用したせいだ。鼻水やくしゃみは治まったが、何時も代わりにこうなる。

Mという女 4

 いっこうに裸にならない客の男性をもてあましたが、その後は、何となく世間話に終始して、2時間があっという間に過ぎてしまった。客にそのことを告げると「延長出来ますか?」というので、また店に電話して(お客様が1時間延長なさりたとおっしゃいますので宜しくお願いします)と連絡し、その日は3時間、ただ話をして終わった。先に帰ろうとするMに、「これ少ないでしょうがお礼です」と言って、財布から5万円出して渡してくれた。店に帰って、待機している同僚にその話をすると、一番若い子が(嫌だ~インポじゃあないの)と言って笑う。この日は、たてつづけに3回指名があり、午後9時に帰宅した。夫の弘治はすでに帰宅しておりリビングでビールを飲んでいる。(貴方食事は?)と聞くと、子供達とコンビニ弁当で済ませた。と言い、例によって、(どうして何時もそんなに遅いんだ)とか、(変な仕事をしてるんじゃあないのか)などと、ねちねち小言を言う。Mは、毎度のことで慣れっこになっているが、今日は何だかむしゃくしゃして、(私だって働きたくはありませんよ。じゃああの子達の塾の月謝は誰が工面するんですか)と、言わずもがなのことを言ってしまい、険悪な空気になって、夫はプイっとして寝室に向った。階下に夫の両親が居る。大声で喧嘩することも出来ず、いつもじめじめした口喧嘩で終わる。

 長男を入れたいと思っている私立中学校の説明会を聞きに行って、今日はお店を休むつもりだったが、そのことを言うため店に電話すると、ママが「ねあんた、昨日の新規の客から指名が入っているよ」と言われ、一瞬何のことか思い出せないで居ると「ほら、インポの客だよ」と言われ、エっと思った。確かに会話が弾み、自分のことを気に入ってくれたらしい感触はあったが、昨日の今日で呼ばれるとは思っていなかった。(今日はするのかな)と思い、休むつもりだったが大急ぎで指定された時間にホテルに駆けつけた。客の男性は昨日と同じ背広を着て迎えてくれたが、「すみませんご無理を言って」などと丁寧に言う。返す言葉も見つからず、その代りに、精一杯喜びを表情に表せてじっと見つめた後、しおらしい態度で、しかも聞き取れないぐらい小さな声で(ありがとう)と言い、今日はどうなさいますか?と聞く。客の男性は「貴女さえ良ければ終いまでご一緒したい」と言う。

 Mのような仕事をしている女性は、一人の客と長時間過ごすことを嫌う傾向があり、店も不審に思う。特に、売れっ子の場合、独り占めされると他の客に迷惑がかかるからだ。それよりも回転してくれたほうが実入りも良い。Mは言った。(私もそうしたいのですが、お店の決まりで3時間が限界なの)客は、いかにも残念そうに「あそうですか、じゃあしょうがありませんね」と言い、結局、店にそのように報告した。----------------