探偵日記 4月23日木曜日 晴れ
昨夜、歌舞伎町で飲んでタクシーで帰宅途中、青梅街道の高円寺辺りで警察の事故処理が行われていた。少し大きな事故のように感じたが、今朝の新聞で、「萩原流行」さんが亡くなったという記事を読んで納得した。場所や時間が符合する。なんでも、大型のバイクに乗ってて、転んだ所を後続の車に轢かれたらしい。62歳というからまだ死ぬ歳ではない。ただ、早い時期から鬱ぎみだったようで、どんな人でも何かしら悩みはあるものだと、妙な所に感心した。
僕のストレスの原因になった某女のメール攻撃は止んだようだ。言ったことを「そんなことは言っていません」と大騒ぎするので、(僕の職業を忘れたんですか)と言って、録音を聞かせたのが効いたようだ。以来、といっても今日で4日メールや電話は一切来ない。しかし、妙なもので、なんにも来ないとこれもまた落ち着かない。ましてや、彼女に渡さなければならないお金、3000万円を預かっている。他人のお金も自分のお金も区別がつかない僕にとって、これだって大きなストレスになる(笑)低レベルの性悪女の緻密な計算か。等と深読みするコナンなのだ。
Mという女 8
Mは翌日、所属する店(売春クラブ)に行って、(今日で辞めさせていただきます)と言い、S氏の待つホテルに直行した。店の経営者は「その客には気をつけろ」と言ったが、事情を知らない人の言う事だと鼻で笑った。(私はとてつもない大きな魚を釣り上げたんだ)店を出たあと、意気揚々と歩き、それでも習慣で山手線の駅に向う。
晴れて自分のものだけになったMをS氏は大事に接した。高価な服やアクセサリー、を買い与え、月々のお手当も300万円(というのは、Mがあの仕事でそのくらいの収入になった)と言ったからで、その分を保証したのだ。その他、歯医者に行かなければならない、目がちょっと、などと言えば、その都度数百万円をポンと渡してくれた。そうこうするうち、Sの正体が徐々に見え始め、Mは、(私の直感に間違いは無かった)と、ますます自信を深めた。Sの言葉の端端から、彼が東北地方の山林王の七代目で、Sグループが率いる100以上の企業の最高責任者であること、青森や仙台のほか、東京にも幾つかのビルを所有していることなどを知った。やがて、妻の行動に不審を抱きネチネチと責めたてる夫や、疑惑の目で詮索する夫の両親にたまらず、遂に婚家を飛び出した。まだ幼い二人の子を残すことに一抹の罪悪感は抱いたが、そのときのMは、湯水のようにくれるお金もさることながら、どうしょうもないほど未熟なSのセックスの手ほどきをすることに、夢中になっていた。-------------------