探偵日記

探偵日記 4月24日金曜日 晴れ

爽やかな朝だった。しかし、二日酔の僕はタイちゃんに引かれてふらふらと散歩。お願いして40分ほどで帰宅した。ご飯を食べてすぐ出ようと思ったが、姫がダイニングに居たり洗面所を使っていたりで、出そびれ、仕方が無いので、クローゼットを片付けた。冬物と春夏用のスーツを入れ替え、セーターをケースに仕舞い、正午事務所に着いた。

28日から郷里の山口県下関へ。車に荷物やタイを乗せて片道1100キロを一人で運転する。免許を持っている見張り番は決して代わろうとせず、僕の運転の様子を監視、{何よ、このスピードは」とか、「前の車に接近しずぎてるよ」と始終見張って文句を言う。まあ、お陰で居眠り運転にはならず無事帰ってこれているのだが。今朝、同級生から電話がかかって、7月の15日あたりに同窓会を計画している由。「もう皆だいぶんくたばってきたから元気なうちにやろうと思って」と言う。賛成賛成。

Mという女 9

 勿論、S氏には妻子も居て、特に、妻は伊達家の末孫で由緒ある家から嫁いできたらしく、見識の高い女性らしい。したがって、夫婦の営みもあっさりしたもののようで、たまたま出会ったMのテクニックに参ったという。それがどれほどのものか分らないが、十分すぎるほどの財力がありながら、世間知らずというか下世話に疎い男を狂わせた。やがて、東京に行ったまま帰ってこない夫に痛くプライドを傷付けられた妻は、さっさと実家に戻ってしまった。

 そのことを知ったMは(もしかしたら後妻になれるかもしれない)と思い、以後、事ある毎にそれらしいことを仄めかし、幾つかの言質を得た。S氏はもうすっかりMに夢中だったから、青森の自宅や、グループ会社をMに見せたりした。しかし、良く考えてみるとMには歴とした夫や子供も居る。仮に、S氏が正式に迎えようとしても叶わぬことであった。身勝手極まりないMは、友人に紹介された弁護士に(夫との離婚及び慰謝料と、財産分与)を求める調停を依頼したのである。

 Mの相談を受けた弁護士は、(この女バカじゃあなかろうか)と思ったが、他に仕事の無いこともあって不承不承引き受けたが、ひとこと言っておいた。「奥さん話は良く分りましたが、慰謝料を請求されるのは貴女の方ですよ」と。-----------------