探偵日記 7月09日木曜日 雨
今日は5日ぶりにプールに行った。疲れたが、爽快感はあった。目が回るような1週間も終わり、明日から帰郷。地元の温泉で行われる同窓会に出席する。郷里に家は有るが一人で泊まるのは寂しいし、怖がりの僕は夜トイレに行けないと困るので、明晩は下関のホテル。次の日、ゴルフをしたあと、一の俣温泉泊。その次の日は未定。また下関に一泊するか、京都で途中下車するか迷っている。ともあれ、ストレスを解消してこよう。
れんげ 7
楓の家から程ないところに、八重垣神社という小ぶりな社があり、この辺の鎮守となっている。その周囲は田園が広がり、主に、さつまいもを栽培している農家が多い。そのうちの一つに藤代という家があって、老夫婦は、よほどの悪天候でない限り毎日のように畑仕事に出掛けていた。夫婦には、さつま芋の生育に加えもう一つの楽しみがあった。それは、付近には数匹の野良犬がいたが、その中の一匹がなぜか自分達になついてくれた。最初は、遠くから自分達の様子を眺めているだけだったが、或る日、妻が昼食用に持参したおにぎりを見せると、警戒しながらも十メートルほどの所まで近寄り、おにぎりを凝視している。夫が、腹を空かしているんだろう。と言って放り投げると半分ほど口に咥えて走り去った。夫婦は、ほうじ茶を飲んで再び畑に入ったが、暫くするとまたあの犬がやってきて、残った半分を美味しそうに食べ始めた。夫婦はそんな光景をほほえましく眺めたが、翌日、畦道に座って弁当を開く頃になるとその犬が現われ、じっと二人の様子を窺っている。妻が、おいで。と言って手招きをすると、少し後ずさりしたかと思うと恐る恐るという感じで近寄ってきた。五メートルほど距離を保ち、今度はお座りをして待っている。立ち上がると逃げるだろうと思い、まず、卵焼きを投げると上手に口でキャッチして食べている。次に、今日は多めに作ってきたおにぎりを投げてやると、素早く口に咥えて持ち去った。ーーーーーーーーーーーーーーーー