探偵日記 01月12日木曜日 晴れ
昨日のゴルフコンペ隔月の第二水曜日に行われる「二水会」コースは何時もの、埼玉県毛呂山町のエーデルワイス。零下だとか、雪になるかもしれないという予報だったが、杞憂に終わった。どうかするとちょっと暑いぐらいの好天気。ただ、調子はいまいちで、良い時と悪い時が交互にあって、結果は3位。二次会は阿佐ヶ谷の「えん家」でやり、8時過ぎには帰宅。今朝は6時40分に朝食を摂り、9時に、「ホテルオークラ別館」で地方から上京中のご依頼人と面談。もう15年のお付き合いで、今日も新しい案件を頂いた。10時15分事務所に戻った。
ロマンチックな恋の結末 32
それからも時々連絡するのだが返事のないまま数か月経過した。弁護士のほうは依頼された案件が宙ぶらりんで困ったようだが、まあ、着手金を多めに貰っており「気にしないでください」と言っていた。それにしても無責任な話である。探偵に僕にはいいとしても、弁護士には連絡をしてもらいたい。携帯の留守電に入れたりしたが無のつぶて。そのうち、弁護士も僕も諦めて、同時に何となく忘れてしまった。
それにしても、マルヒの夫からも弁護士事務所への連絡が途絶え不思議に思っていたが、それからさらに巣か月たった時、調査員のOが、「所長、田沢湖の近くの山中で、あの先生とおばちゃん心中したみたいですよ」と言ってきた。僕はテレビをほとんど見ないが毎朝新聞は必ず読むようにしている。ところが、泊りがけのゴルフがあって、2日ばかり読んでいない。エッと言ってOを見ると(なんだ知らないのか)と言う表情で詳しく説明してくれた。なんでも、山菜取りに山に入った地元の主婦が発見したらしい。男性のほうは、ポケットに入っていた手帳や名刺から、女性は運転免許からそれぞれ身元が判明したという。男性は、東京の大学教授、女性は地元に住む人妻。と、報道されていたらしい。
僕は複雑な心境になった。そして、数か月前、最後に依頼人母娘に会った時の会話を思い出した。二人とも、マルヒの持つ有価証券や保険にこだわっていた。探偵の僕には縁のない額の預貯金もあって、(外に女を作られた)妻にとって、もともとそれほど大事に思っていなかった夫のことである。別れるなら根こそぎ取りたい。と言っていたし、「福田さん、何とかならない?」と、意味ありげに問われたこともあった。相手の女性に話が及んだ時に、吐き捨てるように「あの外道」と言った依頼人の顔が浮かんだ。(ちょっと調べてやろうかな)まさか母娘が自殺に見せかけて亡き者にした。とも思えないが釈然としない気持ちで数日を過ごした。しかし、好奇心もそこまでで、立て続けに舞い込んだ調査に追われ、いつともなく忘れてしまった。-------------