探偵日記 11月16日木曜日 晴れ
寒い。元来弱虫の僕は雨や風が嫌いだが、寒さにも弱い。体もそれを良く知っており、この頃から寒冷ジンマシンが出来始める。面白いことに、寒さが強くなるにつれて徐々に上に上がってくる。今は足首だけだが最終的には太ももまでかゆくなる。だから今朝も、シャワーの後念入りに補水液を塗った。亡くなった叔母が言っていた「あんたの父親はしょっちゅう足を掻いていた」と。DNAは嘘をつかない。10時過ぎに事務所に着く。今日は、20時半ご依頼人が来所の予定。麻雀は19時半にはやめなければならない。ちゃらんぽらんでいい加減な性格だが、決して仕事は疎かにしない。
結婚 4-5
前にも書いたが、僕の事務所の(報酬規定)によると、結婚調査は基本料金500,000円。これに公簿取得費用や、場合によっては旅費交通費、宿泊費、レンタカー代などがかかる。決して安くはないが、手間暇がかかるうえ個人情報保護法のせいでこの種の調査は非常に困難になっている。しかし、若い人には負担が大きいので、表現はおかしいが情報の切り売りをしようと思っている。例えば、結婚相談所や婚活パーティで知り合い、結婚を前提に交際が始まった相手のことをもっと知りたい、或いは、確認しておきたい。といった場合、住所の確認30,000円、勤務先の確認50,000円から80,000円(勤務先の確認の場合1日の尾行調査を必要とする)また、相手が言っていることの真贋を確認したいこともあるだろう。その場合、30,000円~50,000円で引き受ける。断わっておくが、むやみに相手を疑え。と言っているのではなく、将来の幸せのための保険をかけておいてください。というほどの意味である。
大学講師の女性の件に戻る。3日後、依頼人は新宿で彼と会うことになった。時間は19時、場所は伊勢丹の前のビルの5階ににあるちょっと高級な居酒屋。僕も良く知っている店で明治通りに面している。バス停もあって張り込みにはさほど難しくない現場といえた。僕は調査員3名とともに現場に行き、まず依頼人を確認させた。(あの女性と出てくる男の住所確認だ)と指示し、依頼人から聞いた男性の特徴を説明した。依頼人はビルに入る際、周囲を見回していた。僕を探しているのだろう。僕は、メールで(現場についております。こちらのことは余り気になさらず楽しんでください)と知らせておいた。ほどなく、当該人物と思われる男性が連れの男とともにビルに入りエレベーターに乗った。なかなかいい男である。背はそんなに高くないがバランスのとれた体格で、サラリーマンならもう管理職だろう。
21時45分、依頼人とともに4人の男女が何やら楽しそうに語らいながら出てきた。僕は、(じゃあ頼むよ)調査員らに告げて現場を離れた。後で聞くと、この日の尾行は大変だったようだ。------------