探偵日記 11月22日金曜日 曇り雨の予報
昨日は3人の人と会った。一人目は妙齢の美人で人妻。池袋の喫茶店で2時間半、じっくり話を聞き、僕の考えも伝えた。相手がどんな関係の人であれ自分から心が離れていく。と感じることは辛く悲しいものである。ましてやそれが最愛の者ならば、その寂寞感は計り知れない。後期高齢者となった僕も数えきれないほど経験がある。単なる仲間のこともあれば、部下の調査員や親しい友人のこともあり、恋人だったこともある。超のつくちゃらんぽらんな性格の僕は、ビール1本飲んで一晩寝てサッパリ忘れることもあれば数日考えることもある。しかし、もがき苦しんだことは一度もない。眠れなかったり、胃が痛んだりの経験も勿論ない。ところが、それで命を絶つ人もいれば、ストーカーとなって事件を起こすものもいる。では、しがない「探偵」としてどのように接し、どんなアドヴァイスをするのがいいのか、今でも正解は見つかっていない。精神科医や心療内科の先生はどうしているんだろう。
二人目は某社の六代目。これから時代の流れに翻弄されながら本物の経営者になってゆくだろう人である。わが貧乏事務所を応援してくださり、さして能力も無い探偵の僕を認めてくれている数少ない貴重な人だ。
三人目は、おだてながら僕を見下し、適当にからかってくれ、しかもしっかり営業を忘れない(したたかな銀座の蝶、夕ちゃん)人生は面白い。
そうか、一人目の人に今度会ったらそう言おう(人生は捨てたものじゃあない)って。