探偵日記


お盆明けの月曜日。そろそろお尻に火がついた。普段より早く事務所のある新宿へ。やることは山ほどあるが考えがまとまらない。これも老化か。




開業医に関する素行調査




1週間後、今度は調査員1名を派遣。費用は湯水のように出るし、何もケチらなくて良いのだが犬鳴の性格でなるべく依頼人に負担をかけたくないのだ。その調査員から連絡が入った。蒐集した情報は予想以上のものだった。実家の状況、母子の考え方、それに、思った通り母親の不倫、相手も分かった。




調査員が帰ってくるとさらに詳しく分かった。当然ながら、看護婦の考えは(妻の座を奪い取ること)母親も(頑張りなさい。お母さんも全面的に協力するから)とけしかけている。犬鳴は思った。確かに、倫理観も節操も無い母子だが、地方都市から上京した何の取り柄もない娘にとって、都内でも有数のクリニックの経営者の正妻になることは、夢というにはあまりにも大きか、命を賭けてもいいくらいのものだろう。




但し、相手の女性にこんな錯覚をさせるのも男が馬鹿だからである。まあ、月とスッポンの例えもあるが、依頼人と看護婦の美醜の差はそのくらいのものだった。ドクターも狂い、看護婦も勘違いした。犬鳴は、容貌こそ看護婦奈に負けるが、心優しい依頼人のために、精一杯の事をしてやろう。と、思う。ーー