探偵日記 


2020年08月18日 火曜日 晴




毎日暑いがこれは真夏だから仕方ない。




ただ、年々こたえるようになった。探偵稼業ももうそろそろ潮時かなと思うが他にやることもない。思えば僕の最大の欠点というか、我が人生に於いて最も反省すべきは「後継者」を育成できなかったことだろう。周りを信じなかったわけではないし、それなりに可愛がってきたつもりだが、叱らなかった。僕は小器用な人間で、今まで先輩や上司にこっぴどく怒られた経験があまりない。だから、社員の叱り方が分からなかった。また、こうも思う。「探偵」は孤独な職業ではないかと。確かに、尾行などチームプレーを必要とする場合もあるだろうが所詮自分自身が責任を以て達成しなければならないのではないか。大勢で尾行すると、仲間を当てにして目を離す場合が多い。失尾して、誰かがちゃんと見ていてくれただろう。と思っても、結局みんな誰かを当てにして、あ~あ。となる(笑)




開業医に関する素行調査




ねえ、犬鳴さん何とかならないかしら。或る日のこと、何時もの喫茶店で報告を兼ねてランチをご馳走になっている時、依頼人がぽつりと言った。10人依頼人が居たら10人が同じことを言う。(何とかならないかしら)イコール(何とかして)ということである。浮気(不倫ともいう)は男と女が犯すものだが、根底にその人その人の「心」が紡ぐものである。それが錯覚であっても当人同士は大真面目に取り組む。愛している。と思ってしまうのだ。じゃあ、妻のことは(夫は)に愛情は無いのか。ノー、あるのだ。だからこそ三すくみで苦悩する。




犬鳴は、こんな時必ずこう言う。毎回同じことを言うようだが、1)弁護士に依頼して損害賠償を請求する。まあ、法的にはさほど高額にはならないが、突然法律事務所から内容証明が届いた不倫相手は大いに困惑し、時には、錯覚から目が覚める場合もある。また、一時的には結束するが次第に疲れてくるし、何より経済的な痛手を被るから効果がある。2)弁護士費用をかけたくないなら親族を巻き込んで大騒ぎをする。離婚するとか、自殺をほのめかすとか言って悪いことをしている配偶者を道義的に追い詰める。しかし、犬鳴にそんなことを言う依頼人は1も2も望んでいない。3)二人を別れさせてくれ。というのである。勿論、依頼人が関知せず隠密裏にである。これが一番難しい。昨今(別れさせ屋)といのもあるそうだが、これは詐欺に等しいから決して乗ってはならない。理屈は簡単で、妻と別れたい夫が、または、夫と別れたい妻が、或いは、不倫相手の家庭を崩壊させたい愛人が頼むのであろうが、万に一つも成就しない。ーーー