ストーカー その2

探偵日記 11月10日土曜日

昨夜は朗報が入った。一昨日の朝、友人宅のワンちゃんが2匹が逃亡した。友人宅は6匹の犬を飼っている。阿佐ヶ谷の歯科医だが、一家で犬好き。特に、奥さんがその傾向が強く、ラヴラドールのオスメス2匹いたのだが、近所のペットショップに餌を買いに行った時、「自分をじっと見つめる子が居たの」というわけで、ほとんど衝動的に(ミニュチアダックスフンド)の男の赤ちゃんを1員に加えた。友人は、僕のゴルフ敵で飲み友達。1100キロ離れた僕の田舎にも他の友人らと来てくれた。或る日、その友人が苦笑いしながら言う。「ももちゃんがお産し、3匹生んじゃった」同じくゴルフ仲間の友人が経営するレストランで、ワイワイ飲んでいる時なので、誰かが「それはおめでとう。ところで、あんずも良くそんな力が有ったね」と言うと、歯科医の友人曰く「否々、パパはロッキーなんだ」とのこと、その場に居た全員絶句した。

更に説明を聞くと、新たに家族となったダックスフンドのロッキーと、ラヴのももちゃんが不倫したらしい。ちょっと卑猥な表現でお許しいただきたいが、小学1年生の男の子と、50を過ぎた巨漢の女性がーーーーー その日はこの話題で大いに盛り上がり、誰かが、(そのうちここに連れてきて欲しい)と言ってお開きになった。

それから1ヶ月ぐらい経っただろうか、歯科医の友人が、予防注射も終えて、3匹の内1匹を連れてきた。れもんという女の子、僕は、ラヴラドールとミニュチアダックスフンドの子供ってどんな?と興味津々だったので楽しみにしていたが、顔と体全体はラヴ、足と、やや長く見える鼻がダックスだが、この上なく可愛いい。他の誰かが(人に上げるのそれとも自分で飼うの)と聞くと、「家内が手放さないって言うからしょうがない」という返事。ちょっと玄関の戸を開けた隙に、それっーとばかりに逃げ出したのが、れもんとポッキー(ポッキーは男の子)奥さんが慌てて追いかけたが捕まるものではない。ところが、女の子のれもんは、暫くして帰ってきた。聞くと、(いつもママと行くお薬屋さんに、ちょっとだけ挨拶して帰って来た)由。

しかし、ポッキーは何時まで待っても帰ってこない。近所にチラシを貼ったりしたがやがて世も更けてきた。友人宅では、やはり歯科医になっているお嬢さんがペット専門の探偵社に捜索を依頼、その探偵社は、やはり写真入のチラシを貼ったり、内偵(笑)もしたようだ。そして昨日の午後、ご近所の主婦が、(中野区白鷺の辺りで見かけた)と教えてくれ、その主婦と奥さんが駆けつけ周囲を探索していたらポッキーが居たという。

大の犬好きの奥さんは、前の晩一睡も出来なかったようで、ポッキーを見つけるや「ポッキーママよ」と言って近寄ると、たった一晩で野生化したわけでもないだろうが、ポッキーは(ウ、ウー)と、低く唸って逃げ出したらしい。それでも、ポッキーの名前を呼び続け追っかけて行き、団地の階段脇まで追い詰め、ポッキーと呼んだら、ポッキーが奥さんに飛びついてきて、大きくため息をついたという。目出度し目出度し。

註)ポッキーはお散歩が嫌いで、今まで外に出た経験が無かった。朝ごはんを食べただけで、知らない場所に行ってさぞかし怖い思いもしただろう。それにしても、阿佐ヶ谷の家から数キロはなれた白鷺に行くのに、中杉通り、早稲田通り、という大きな道路を越えなければならない。。そのほか小さな道でも車は通る。良く無事だった。ポッキー、もう逃げちゃあ駄目だよ。



ストーカー その2

調査員は、マルヒが公衆電話ボックスから電話をしているところの写真を撮り、時間を確認した。もし、この時間に、マルヒが悪さをしたならば状況証拠にはなるだろう。仮に、大きな事件に発展したなら、警察はその公衆電話の発信先を調べるはずである。マルヒが携帯電話を使用しないのは、ある程度の知識は持っているのだろう。

依頼人に聞くと、同時刻、自宅の固定電話に無言電話がかかったという。鍵は返してもらっているので、留守中に入って悪戯をされることはないが、お店が終わったあとは、自分のマンションに帰らず、当分の間、ママの家に居候するのだとも言っていた。

この日は、無言電話だけで特別な動きは無かった。21時過ぎ、尾行班の調査員から「自宅のある駅に下り食堂で夕飯を済ませて今帰宅しました」との報告が入った。

その後の調査で、依頼人からの情報どおり、父親は公立中学校の教師、母親は地元の市役所に勤務する典型的なサラリーマン家庭で、姉と妹があり、姉は既婚、妹は大学卒業後、都内の会社に勤務していた。どちらかというと堅実な家系で、仮に、依頼人と正式に結婚ということになっても、すんなり認めてくれるかどうか疑問である。---