探偵日記 11月8日木曜日
今朝は4時45分、可愛い可愛いタイちゃんに起こされた。普通、夜明けが遅くなればそれに準じて目覚めるものだが、我が家のワン公は、今まで5時だったのがだんだん早くなる。このままだと、あと一ヶ月もすると2時か3時に起こされるのではないかと恐怖すら覚える。という次第で、今日は、1時間10分で分6000歩あるいた。それでも家の近くに来ると、左に曲がれば我が家なのに、そっちを見ない振りをして右のほうに行こうとする。本当に悪賢い犬である。
ストーカー その00
明日から、昨今大きな社会問題となっているストーカーについて報告してみたい。というのも、最近お付き合いしているテレビ番組の制作会社の担当者から、(ストーカーに遭っている人と一緒に動きながら映像に出来るような案件はありませんか?)と言われ、あれこれ思い出しているうち、典型的なストーカー氏のことが頭に浮かんだからである。詳細は明日からの本文を見てもらいたいが、我々探偵社には、被害者よりも加害者からの依頼が多い。探偵業法成立と共に、主管から(その恐れのある依頼は受けてはならない)と厳しく指導されているので、大概はお断りしているが、不況で仕事の無い昨今、受件したいと思うことも多いし、依頼するほうも、まことしやかな理由を設け頼んでくる。探偵社が騙されるのである。
読者の方たちの中にはご記憶の人も居られると思うが、数年前、渋谷区在住の(カリスマ美容師)のお嬢さんが、身代金目的で拉致誘拐された事件があった。結局犯人は逮捕されたが、その依頼人は、「息子の結婚相手の素行調査)と称し、お嬢さんの日々の行動を尾行調査させた。朝家を出て、どの道を歩き駅まで行くか、帰宅は何時頃か、などなど、調査を引き受けた探偵社は僕も知っている事務所だった。勿論警察に呼ばれこっぴどく怒られたことは想像に難くない。
僕の経験でも、まだ法律のないころの話だが、明らかなストーカー氏から、若い女性の日々の生活状況を調査してくれ。と依頼されたことがある。その若くハンサムな青年に対し、(心変わりした女性を追っかけてもしょうがないじゃあないか、君みたいにハンサムならばすぐに次が見つかるだろう)と諭し、(調査料って高いよ)と翻意を促したが、翌日、事務所で提示した調査料を全額前払いしたので、気は進まなかったが着手した。
それから4~5年経った或る日、自宅でぼんやりテレビを見ていると、数日前、遺体が見つかった殺人事件の犯人が逮捕されたというニュースが流れて、その犯人の名前を見て驚いた。ハンサムな僕の依頼人だったのだ。殺人に至る推移も数年前と同じである。彼にはそういう癖が有ったのだろう。-----