調査はあっけなく終了した。依頼人は、「夫は、会社の近くのワンルームマンションに住んでいると思います。一度私も連れて行かれ、(ここだよ)って説明されたことがあります。家具なども付いていて、接待などで遅くなった時仮眠するにはいいところだと思いました。」さらに、「数年前大きな手術をして、男性機能も低下したようで・・・もともとそういう方面は淡白な人でしたから、女性と暮らすとか、特定の恋人を持つなんてことは無いと思います。」と言っていたのだが。
僕は、依頼人のそういう説明を聞きながら、この人は、強いてそう思いたいのかな。それとも、心から夫の言い分を信じているのだろうか。いずれにしても、品行方正に生活しているなんてことは無いだろうと思った。張込尾行調査初日、依頼人の希望はものの見事に打ち砕かれた。午後2時、会社を出たマルヒは電車を乗り継ぎ、山手線「五反田」駅に行き、喫茶店で待ち合わせた女性とラブホテルに直行。3時間を過ごし、やはり電車で帰社した。調査員たちは二手に分れ女性班の報告によれば、その女性はマルヒと別れた後、とあるマンションの一室に入ったという。同室は、デリヘルの待機事務所で女性は風俗嬢だった。後日の調査で、マルヒはこの女性に、35,000円支払っていた。
一旦帰社したマルヒは、再び会社を出た後妙な行動をとった。張り込み中の調査員は、マルヒが出る10分前に事務員と思われる30代後半の女性が退社する姿を視認している。その後、マルヒを尾行すると、地下鉄有楽町線「銀座一丁目」駅のホームで10分前に退社した事務員らしき女性と合流。二人は、永田町で乗りかえ新宿へ。居酒屋で食事した後、歌舞伎町のラブホテルに入った。2時間半後ホテルを出たマルヒはタクシーで、女性は小田急線で下北沢の小ぶりのマンションに帰宅した。生憎、マルヒのタクシーが変則的な動きをしたため失尾(見失うこと)したが、方向は会社のある銀座方面だったこと、女性はやはり事務員で、最近結婚していることなどが判明した。—- 続きはまた明日。