探偵日記

探偵日記 12月04日水曜日晴れ

今日は事務の高ちゃんがお休みなので、朝食を済ませてすぐに支度をし事務所へ。誰も来ていない室内に入り、まず電気をつけてエアコンもONにする。

日本橋の取り込み詐欺の会社のドアやメールボックスに張り紙をする。「この会社から被害を被った方は連絡して下さい。当方も債権者の関係のもので、この会社の情報を持っています。債権者会議を開き今後のことを話し合いましょう」と書いたが2社から問い合わせがあったきりで他は音沙汰無しである。それぞれ自力で解決しようとしているのだろうがどだい無理な話。グループは弁護士を代理人に立てて(これで一件落着)と思っているのだから。その代理人の手紙に因れば、「25社で負債総額は1億円余り」だという。バカにするんじゃあないよ。大の男達が5~6人、じっくり計画を立て仕掛けた(しのぎ)である。都合8か月、事務所を設け女子事務員を雇い、騙しの営業をして1億円はないだろう。彼らはだまし取った商品を墨田区にある(バッタ屋)に半値ぐらいで叩き売った。そうすると、実際の収入は5000万円以下となる。それぞれ、ベンツなどの高級車を乗り回し、若い女と優雅に生活している。一般の会社で言う、(営業管理費)を引いたら一人頭数十万円にしかならない。詐欺として立件されれば半年以上留置され、実刑ともなれば数年は臭い飯を食べなければならない。割に合わないことは明白である。弁護士先生も騙されているのか、或いは列(仲間)か。

しかし、と思う。被害に遭った会社はどうするつもりか。張り紙を(胡散臭い)と感じたとしても様子を探ってもいいではないか。取引に際し、僅かな調査費を惜しんだばっかりに大きな損失を被った。仮に、それが500万円だったとして考えてみよう。500万円の純利益を稼ぐのにどれだけの商いをしなければならないか。釈迦に説法かもしれないが、商売の基本を書いてみる。或る会社が、月1000万円の売り上げだったとして、(総売り上げー原価ー総利益一一般管理費ー営業利益ー借り入れ金利等の営業外費用ー経常利益ー税金ー純利益)こうなる。皆さんは、良く粗利(あらり)という言葉を聞くと思うが、これが、総売り上げから原価を引いたものである。したがって、粗利が100パーセントなんていう商売は無い。大概は良くて30パーセント内外だろう。会社は300万円の中から、1000万円を稼ぎ出すための諸々の経費(事務所の家賃、社員の給与、営業交通費等の雑費、備品の維持管理費)が出て、やっと営業利益となるのである。例えば、大手の商社などは粗利を1パーセントを下限に設定している。鉄鋼等に至っては1パーセントを切る。したがって、純利益となれば出ればいいほうで、採算ギリギリの会社が多い。だから、500万円の不良債権が発生した場合、取り戻すのに、将来100倍(5億円)ぐらいの商いをしなければならないのだ。

僕は若い頃から、初めて訪問したり、会った経営者に対し(調査は転ばぬ先の杖なんです)と言って口説いた。だから私の会社を使いなさい。という意味で。しかし、一般に、経営者は多忙である。(おかしいな)と肌で感じても忙しさにかまけてつい見逃しがちになる。そうして、前述のような取り返しのつかない損害を被ってしまう。被害に遭ってからの費用は、僕が言うのもへんだが、(盗人に追い銭)となることが多い。むしろ殆どがそうなる。弁護士費用も、探偵に払う調査費用も。ただ、探偵の場合、法律に縛られないで行動できる強みがある。今回も、詐欺グループの弱点を幾つか捕捉してある。これを公開されたくなかったら僕の関係者の分だけでも支払えばいい。---------

12月のことを(師走)という。僕は師でも匠でも何でもないが、一人前に忙しい。というか気ぜわしい。だから、経験した案件でもっともっと書きたいのは山々なれど来年じっくり書こうと思う。怖い怖い人の心を(笑)