探偵日記

探偵日記 1月30日木曜日曇り

今日も比較的暖かい朝。何時ものように起きて朝食のあと10時に家を出る。新宿御苑前駅に着き、まず治療院に寄って事務所へ。最初は馬鹿にしていたけれど少しづつ良くなってゆくのが分かる。今日の治療院は大変込んでて少し待たされた。ご他聞に漏れずジジババばかり。その中にカップルでやって来た人が居て顔を見て驚いた。向こうは忘れているようだったので声もかけなかったが、25年前、歌舞伎町の高級クラブのゴルフコンペで韓国に同行した夫婦だった。当時、歌舞伎町のど真ん中でふぐ料理の店を経営していた。名前は「玄海」。二人は共に、あの有名な水たきの「玄海」で働いていた。いわゆる職場結婚で夫婦になったと聞いていた。奥さんが強い人でご主人は使用人のようだったこと、もの凄く高い店だったことなどを思い出した。

韓国では第一日目のゴルフを終え、食事を兼ねてあの有名な(キーセンパーティ)に赴いた。ただ、女性も数人参加していたのであからさまなことは憚られたが、酒が入るともう収拾つかなくなって、じゃんけんでその夜のパートナーを決め、選ばれた女性はそれぞれの客の横にはべった。勿論、協調性のある僕もじゃんけんに負けて残っていた女性を選んだが、困ったのはそのご主人である。何しろ大蔵省の妻が横に居て、そんなふしだらなことに使うお金など(1円たりとも渡すものか)と、鬼のような顔で睨んでいる。たまたま横に居た僕が(まあ、奥さんと一緒なので女性をホテルに連れて行くなんて出来ないでしょうがカラオケまで付き合ってくださいよ。)と言って、ふてくされている奥さんを置いて数組のカップルでカラオケスナックに繰り出した。もちろん僕たちの横にはキーセンがピッタリと寄り添っている。結論は、格好良く言うわけではないが、僕と彼だけしょんぼりホテルに帰った。日本円で6万円も払って手ぶらでだ。それじゃああんまり可哀想だと思ったかどうかは判らないが、帰りしな、僕のパートナーの女性が紙切れをそっと手に握らせてくれた。ホテルに帰って見たら、「明日ゴルフが終わったら電話してね」と書いてある。彼女なりに律儀に役目を果たそうとしているのだろう。翌日、ゴルフが終わって自由行動となり、ポケットをまさぐり礼の紙切れを探したが杳として見つからなかった。(笑)

犬好きの知人の話。彼ら夫婦は自家犬(メスの幸ちゃん)がいるが、センターとかいう施設から行き場のない犬を預かり、いっとき世話をしたあと、ブログで紹介したり、毎月一回行われる(お見合い会)に連れて行き、犬を飼いたいと思っている人と会わせ、先方が気に入ってくれれば里親になってもらう。ということを繰り返しやっているらしい。我が家にも超厄介なのが一匹いるので興味深く聞いた。(それってどういうことですか。今までいる幸ちゃんと仲違いしませんか。)とか、(例えば半年、1年と家族にしておいて、手放せるのかな~)とか。すると知人が教えてくれた。「センターに保護された犬達は、いずれ殺処分になるが、そんな子達が毎年何千匹もいるんです。私達は、一匹でも救ってあげたいから預かっています。」と。これまで数十匹預かり、それぞれ里親が見つかって幸せに暮らしているそうだ。そして、里親たちとの交流も出来、その子達の近況を聞くのが嬉しいとも。僕はその話を聞いて感動した。世知辛いだけの世の中とばかり思っていたが、こんな優しい人たちも存在するんだと。

そんな気持ちで我が家のネクタイ(ジャックラッセル、オス12歳)を見ると、無性に愛おしくなってくる。(長生きしてね)と声をかけたくなる。ところが、生まれてからず~と何の苦労も知らないネクタイことタイちゃんは、僕の顔を見ると挑戦的な目で喧嘩腰になる。勿論、しっぽを振って、遊ぼうという意思表示。この子とセンターの子たちの違いは天地の差がある。かたや、夏は冷房、冬は暖房のきいた部屋で日がな寝て、食べたい時、何時でもそばに食事が置いてある。(我が家では、朝一回手作りの美味しいご飯を食べさせ、部屋にドックフードを常備してある。)朝4時になれば散歩をせがみ好きなだけ好きなルートを歩き、年に二回、7~10日の旅行にも行ける。(と言っても海外旅行ではない。僕の帰郷に付き合わせるってこと)加えて、時々僕が焼肉の残りをそっと進呈する。ただ、残念なことにお見合いに失敗して事実婚は未経験であるが。一方、センターの子たちは、まるで死刑囚のごとくひたすら処分を待っている。ガス室に入る時は死を悟って悲しい目をする子もいるとか。だから、僕の知人のように預かってもらえた子は本当に幸運な犬だ。

昨年末、それまで家族だったらんちゃん(柴犬のメス。前足が1つ無い)に里親が見つかった。僕は、らんちゃんのことを聞き、(ああ、この子は知人宅の犬で一生を終えるだろうな)とおもった。なぜならば、普通に考えて、犬を飼おう。と思った人はとりあえず健常体の可愛い犬を選ぶはずだ。らんちゃんは可愛いというが人間で言えば片手の女性である。ところが、知人宅に来て僅か半年あまりで、独身のキャリヤウーマンに(是非)と強く願望されたという。その人は、知人のブログを見て(この子しかない)と思って、ペット可のマンションに移り、生活用品一式も準備して待っていたらしい。最近のらんちゃんは毛艶も良くなり穏やかで幸せそうな顔をしているとの由。

らんちゃんが嫁入りし、(当分は預かりはやめよう)と思っていた知人夫婦だが、(やはり淋しい)と思い、数日前、またセンターから一匹引き取ったらしい。柴犬のメス、年齢は2~3歳とか。非常にびびりっ子で連れられてきた夜はケージから出ようとせず、子供達が近寄ると怯えて震えているとか。センターでの将来を思えば超ラッキーな犬だが、当の本人は知る由も無い。あのままセンターに居たら10日あまりでガス室送りになっていただろう。まだ名前は決まっていないというが、良かった良かった。