探偵日記

探偵日記 10月14日火曜日 晴れ

台風一過。澄み渡った爽やかな秋晴れの中、9時半に家を出る。4時半ごろ散歩に出た頃は、時おり激しく降った雨もすっかりあがった。今日は13時半に顧問先を訪問する予定で、台風の最中だと嫌だな。と思っていたので一安心。

昨日からある女性からの執拗なメールと電話に悩まされている。勿論僕の恋人とかではない。知人の愛人である。二人はおよそ5年余り関係を続けていたが、知人のほうは(そろそろ潮時)と考え、交際の終わりを宣告した。しかし、優しい知人は1年間の猶予を与え、今住んでいる家を出て行くように諭した。その家は僕のほうで用意したものだから、僕のほうも他人事ではなく気をもんでいた。まだ二人が蜜月の頃、知人が(何でも福田さんに相談しなさい)といったことを覚えていて、(どうしたらいいか)と相談されているのである。3年前、僕が家を提供する時、女性にこんこんと諭したことは、(今から3年という期間があるのだから、その間、一人で生きてゆけるよう努力して下さい)だった。女性はまだ50歳。見ようによっては美人だし健康である。どんな仕事でもいいから自立出来るよう準備して欲しい。というのが僕の老婆心だった。ところが一向に仕事を探さないばかりか、知人から僕を経由して贈られる潤沢なお金で、日がな優雅に過ごし、あっという間に延べ5年間の時が過ぎてしまった。徐々に遠ざかってゆく男の心を、そういうことばかり敏感な女性は本能的に感じとり、(眠れない)日々を送っているという。(死にたい)(彼の家に行く)(福田さん助けて)などのメールを僕に送りつけ、現況を打開したいらしい。

彼女は、これまで3度結婚して、現在の夫との間に男の子が二人居る。5年前、夫と子供を棄てて男性の元に走った。それからの2年半は、一泊6万円のホテル暮らし。女性は、この生活が一生続くと思ったのだろうか。今更、夫の元には帰れないだろうし、実家も自分を受け入れてくれないだろう。と、勝手に考えているようだ。じゃあどうすればいいのか?それを僕に相談したいという。僕は言った。(僕にそんなことを言われてもどうしてあげることも出来ません。僕は、メッセンジャ-ボーイで、お金を届けたり(実は、或る時、ちゃんと受け取っておきながら、まだ貰っていないと言われ、以後、銀行振り込みにしている)伝言があれば伝えるだけの役割で、貴方の人生相談の相手をする立場では有りません。と。しかし、根っからの性悪女は聞く耳持たず、昨夜は電話攻勢で睡眠を妨げられる始末。

このように、男と女は別れ際が難しい。特に、この女性のように(男の庇護で生きてきた)人は、どこまでもしがみついて来るだろう。世の男性諸君、恋愛するならプライドを持った女性にしてください。仮に、相手が背中を見せたなら、(今まで有り難う幸せだった)と言って笑って去れば、案外相手のほうで追ってくるかも。--------