探偵日記

探偵日記 6月04日木曜日 晴れ

昨夜は麻雀のあと歌舞伎町で飲んで、阿佐ヶ谷でも引っかかりギリギリ午前様にならない頃帰宅した。最近は3種類の酒をチャンポンで飲む癖がついて、毎回ほろよい気分で家に帰る。昨日も、まずビール、それから焼酎を飲んで、クラブではウイスキー。阿佐ヶ谷のスナックでもウイスキーのロックだったから、診察のたんびに(お酒は控えめにしてください)と言う主治医が聞いたら目をむいて怒るだろう。ただ、飲み始めが遅かったからさほど辛くなく目覚めた。
事務所に行くと新しい依頼人が来ており、所長が話を聞いている。年配の男性のようだから(大丈夫かな)と思ったが何事も経験を重ねるしかない。

教師と教師 4

信雄の問いに妻の真理子は平然と嘘で返したが、真理子のほうに違和感は残らなかった。信雄の態度には特に変化も無く、単なる日常会話の一つであった。しかし、信雄は次第に焦燥を募らせ、最近では仕事も上の空ということが多い。現在の職場は妻の上司の口利きで採用されたもので、ただ真面目なだけがとりえの信雄は、これまで大きなミスも犯さず10年以上経つ。信雄は真理子と結婚した当時は都内の会社に勤務するサラリーマンだったが、バブルの崩壊と共に業績が悪化し、あっという間に倒産。家出ぶらぶらしていた夫を妻が奔走して今の職場に就職させた。したがって、その上司はともかく、妻には引け目を感じていた。

だからといって、妻が何をしても鷹揚に看過できるほど人間が出来ているわけではない。かといって、妻の嘘を暴き徹底的に追い詰めて、場合によっては離婚もやむなし。というほどの決心もつかず、徒に日々が過ぎていった。そんな或る日のこと、役所の受付に置いてあるパンフレットの「調査」という文字が目に止まった。何んだろうと思って手にとってみると、良くは判らないが探偵の組合のもののようだった。周囲を見ましてポケットに忍ばせた。堅い職場のことである。(小山内さんが変なパンフレットを見てた)なんて噂が立っても困る。仕事が終わって帰り道、途中、車を停めてポケットから例のパパンフレットを取り出し読んでみる。それは、東京都内の探偵社が集う協同組合のもので、都が認可した「東京調査業協同組合」が作成し、主に、警察や区役所、或いは隣県の市役所等に配布しているものらしい。開いてみると、色んな調査を組合が引き受け、信用の置ける会社が調査を担当する。と書いてあり、それぞれの調査料金も明記してあった。------------