探偵日記 8月28日金曜日 曇り
小社の素行調査報告書で、相手側(共同不法行為者)に対し、損害賠償の請求を行うことはごく一般的なことで、請求された相手は、改めて、交際相手に配偶者が居ることを認識し、ある人は、その不倫関係を解消するし、またある人は、事実関係を認め、配偶者に謝罪していくばくかの慰謝料を支払い、関係を終息させる。ところが、(そんな事実はありません。)と言って、徹底抗戦してくる厄介な人も居る。そこで、探偵社の報告書が「証拠」として提出され、裁判で争うことになるが、少し姑息な代理人(弁護士)が就くと荒唐無稽な反論を展開する。僕の経験では、マルヒが相手女性のアパートに赴いた状況について、数年後の裁判で証言させられたのだが、相手側の弁護士曰く、「証人に聞きます。その日の天気をお答え下さい。」ときた。(そんなこと覚えてねえよ)と応えると、次は、「ドアのノブが付いていた場所を言え。」ときた。左か右か。というわけだが、何年も経ってそんな質問をされるとは思っても居なかったので、(覚えていない)と言うと、わが意を得たりとばかりに、弁護士が「甲00号証の報告書は信憑性に欠ける」ときたものだ。そうしながら証拠能力を否定する、或いは低下させようとする。この時は、裁判官が、弁護士の申し立てを否定してくれたので難無きを得たが、最近はこんな弁護士が増えた。相手側も、自分のやったことを隠蔽できた上に、慰謝料も払わなくて済むから大いに喜ぶ。しかしである。仮に、それで裁判に勝ったとして気持ちのいいものだろうか。(嘘をついた)という後ろめたさはないのだろうか。弁護士も、そういう方針を立てて、すなわち、依頼人に嘘の証言をさせることを強要し恥ずかしくないのだろうか。現代は、もう何でもありで、信義も品格も日本人は失ったようだ。
れんげ 36
そして、とうとうれんげが鷲宮家から山本家に嫁ぐ日がやってきた。前の晩、二人の子供達も一緒に「最後の晩餐」を催した。といっても、家族は何時ものご飯。れんげだけには、好物の鳥のささみをボイルして食べさせた。嫁入り道具は可愛いリードと、れんげのお気に入りのお座布団。ご飯のあと、もう暗い路地をゆっくり散歩する。れんげは、少し歩くと立ち止まってひかるを振り返る。何度も何度も同じ仕草を繰り返し、まるで、もう少しでお別れするのが判っているように。---