探偵日記 9月24日木曜日 曇り
9月も残すところ1週間となった。月の中ごろに入った案件は可もなく不可もく粛々と進んでいる。毎度思うことだが、人には決して怨まれたり憎まれないことが慣用である。今回のマルヒ、某メガバンクの支店長さん。長年の優良顧客をそでにしたばっかりに怒りを買った。「人間叩けば埃が出る」これは僕の持論なのだが、叩かれる方はたまったものじゃあない。この支店長さん、ご他聞に漏れず部下の女子行員とよんどころない関係に陥り、こともあろうに、そのA子さんが身ごもった。さあ、どうするの支店長さん。
れんげ 54
その頃、れんげ、そう、当時のシロに毎朝食事を与え、自分の手から、食べ物を受け取って食べるまでに心を許しあった谷楓は、自分の軽率な行動のせいで、危うく殺処分されそうになったシロと、シロの可愛い子供のことを考え、切ない思いで過ごしていた。里親会に行った時、鷲宮さんやボランティアの人たちから、「いいえ、貴女が通報してくれたお陰でこの子達は助かったのです。少なくとも、子どもの方はあのまま放置されていたら感染症にかかって、いずれ死んでいたでしょう。」となぐさめられたが、楓は以来気持ちの晴れない日々が続いている。夫は、「コジマに行って君の好きな犬を買ってこよう」と言って慰めてくれるが、何となくそんな気持ちにもなれなかった。それと、楓にはもう一つ重大な心の闇を抱えていた。ーーーーーーーーーーーーーーーーー