探偵日記 11月04日金曜日 晴れ
朝10時、事務所に行くため家をでた。空気がひんやりして気持ちいい。最近何時もそうだがゴルフの翌日は何となく気怠い。加齢のせいで疲れが翌日まで残ってしまう。数年前まで、6~7日連ちゃんでプレーしたこともある。さみしい限りだが現実を認めるしかないだろうとも思う。
事務所に着くと事務の高ちゃんが居るだけで誰も居ない。みんな現場に行ったらしい、それはそれで結構なことだ。僕ももう一度、被調査人が不倫相手と思われる人物と接触する場面に至る、あのワクワクする刺激を味わってみたい。
ロマンチックな恋の結末 5
母娘は目の前にいる僕のことを忘れたかのように、これからの行く末に思いを馳せ、やや興奮気味に語り合っている。「証拠を突きつけられたら暴れるんじゃあない?」と娘が言えば、「だからその時は私たち家を出てればいいでしょう。ホテルかなんかに泊まって」と母親。もうすっかり動かぬ証拠が手元にあるかのように。僕が口をはさむ(そうですね。その時は緊急避難するのも一つの方法かな。だけどまだはっきりしたことは何もわかって居ないんだから、まずは、調査をしてみてこれからのことは考えましょう。)すると、母親のほうはハッとしたように、それから少しきまり悪そうに笑って、「そうよかおりさん。まずは明後日尾行してもらってからよ」と言った。まあ、二人の間では既成の事実のように思っているかもしれないが、稀に依頼人の思い過ごしということもある。母娘の話を聞く限り疑いの余地は無いようにも思えるが、果たして、二人が考えるような「熱愛」状況かどうか疑問である。少なくともマルヒの写真を見てそう思った。
天文学の教授であるマルヒは毎月のように某県の山に籠って星を見るのが趣味だという。そして、今月はその日が明後日だと。------