探偵日記 12月21日水曜日 晴れ
今日もいい天気。だけど僕は風邪気味で心身ともに不調だ。毎日が何となく面白くない。それでも、やることはやらなきゃあならず、歯を磨いて顔を洗って家を出る。大好きな麻雀も(どっちでもいい)感じだから行かない。今日も早く帰って寝るつもり。
ロマンチックな恋の結末 29
マルヒの教授は数年前母親に死なれかなりのものを相続した。その時、教授の妻(すなわち僕の依頼人)も口出しし、夫婦と教授の姉と仲違いした。まあ、地方都市のことでもあり、とっくにバブルも終わっていたので、驚くほどのものではなかったが、それでも少々こじれたようだ。最終的に、預貯金及び有価証券の類は折半し、教授らが生まれ育った実家の家を教授が、小さなアパートを姉がそれぞれ相続した。
まだ、弁護士に依頼する前、「福田さん一緒に行って調べてほしい。」と言われ、教授の実家に赴き、家の中をざっとちらべた結果、不倫相手に関する10数年に及ぶ記録や資料が出てきた次第である。家族や周囲から(メモ魔)と揶揄されるほどの教授だったから、彼女との馴れ初めから最近のことまで、文字通りびっしりと書かれてあり、閨の様子さえ事細かに記されてあった。性格や物の考え方に加え身体の相性も良かったのだろう。教授は、ひそかにつけていた自身の日記に(人生を2度味わえた)などと書いてあった。記述に加え膨大な写真を見てみると、沖縄から北海道、数年に一度パリやニューヨーク、オランダにも足をのばしていた。「これって動かぬ証拠になりますね、持ち帰りましょう。」と、依頼人。僕は(いやそれは止めときましょう。例え夫婦でも無断で入った挙句に、ご主人の所蔵物を持ち出したら、まあ、窃盗とまではいかなくても攻撃材料にされかねません。)と宥め、(その代り、僕が特殊な方法で調査した結果判明した事実関係の傍証として必要に応じ提出しましょう。)とアドバイスし、渋る依頼人の機嫌を取りながら帰京した。------------