探偵日記 12月20日火曜日 晴れ
今朝は暖かかった。NHKの予報も11月中旬並みといっている。昨夜は風邪気味だったので早々に帰宅。夜、おじやを作ってもらい薬を飲んで寝た。熱は36,4°平熱が35°ぐらいなのでやや高い。酒も飲まなかったので、朝は比較的快調。ご飯も美味しく食べて10時過ぎ事務所へ。そして懲りない僕は今夜は遅くなる予定。(笑)
ロマンチックな恋の結末 28
その弁護士事務所は小奇麗で、まだ独立して間もないような印象を受けた。事前の情報だと弁護士は静岡県出身で50歳の東大卒。専科は違えども自分の後輩にあたる。そんなことを思い描きながら応接室に通された。秘書の女性は想像した通りの美人である。まあ、経済的な問題ではなく、愛人をつくって妻に怒られている男として少しばかり優越感を覚えた。と、教授は呑気に考え、これから遭遇するであろう地獄の仕打ちなど思いも及ばなかった。
少し待たされたあと弁護士が応接室に入ってくる。Hです。名刺を出され、教授も自分の名刺を渡す。以後、お互いに「先生」と呼び合った。(このたびはお手数をおかけして申し訳ない。)と、教授が言えば、弁護士先生は、「いえいえ、ご依頼されればお引き受けせざるを得ませんので、失礼な物言いがあるかもしれませんがご容赦ください」と応じる。一般的に静岡の人は穏やかだといわれるが、この弁護士も人の良さそうな感じで一安心した。(いやあ、まいりましたよ。家に帰ってみたら鍵は取り替えてあるし塀も何だか忍者屋敷みたいになってて)と、ほとほと困ったという顔をして見せる。弁護士は、ちょっと苦笑いして、「そうなってましたか。お嬢さんといらっして、お二人とも相当な剣幕で」続いて、「ところで、奥様は何が何でも離婚したいとおっしゃっているのですが、先生のほうで翻意させる事は出来ませんか。」と聞いてくる。専門バカを絵にかいたような教授に上手い方法なんかあるはずもなく、出来れば今目の前に座っている弁護士に何とかしてもらいたいぐらいだ。
(当面離婚の意思はない)と主張する教授に対し、弁護士は「ご主人のお気持ちは良く分かりました。私も、何も離婚ありき。という考えではありませんから、その旨奥様に伝えましょう」ただ、どうしても調停が不能ならば「本訴」ということになるでしょうが、現状では、一発で離婚の判決が出るでしょう。長年にわたって妻を欺いた夫に勝ち目はない。それから、相手女性に対しても慰謝料の請求をするとか、離婚に伴って発生する財産分与などにも触れ、「先生もどなたか代理人をお立てになったほうが良いかもしれませんね。」と、最後通告みたいに言われその日の面談は終わった。----------