探偵日記 03月29日木曜日 晴れ
今日は夏日だという。なるほど、家を出ると初夏の日差し。駅まで颯爽と歩く。とにかく、電車に乗るまでは俯かないよう厳重に注意されている。途中、ラーメン屋「ろん」の未亡人と出会う。お互い（おはよう）と挨拶を交わす。ほとんど行かないのに律儀な人だ。僕はこの店のワンタンが気に入っている。今度行ってみよう。
結婚詐欺
探偵になってかなりの年月が経つが、この間、結婚詐欺に関連する調査は随分やった。まずは、初めから全く結婚する意志が無いのに「結婚」を仄めかせながら接近し、女性（または男性）から金品を詐取するのが通常言われるところの「結婚詐欺」で、圧倒的に男性が女性をだますケースが多い。
例1 依頼人はちょっと裕福な三十路のＯＬ。六本木のバーでその男と出会っている。男の自己紹介「僕は防衛大学を出て医者になった。ただ、普通の勤務医と違って、省や国家の要請で世界各地を回って医療活動しているので、国内に居られるのは年のうち半分くらい」と言い、もちろん独身であることもかなり明確に仄めかす。やがて深い関係になり「今帰国したすぐに会いたい」と言われたら飛んでゆくようになった。そうこうしているうち「急な指令が出てこれからスイスに行かなければならなくなった。帰国次第精算してくれるのだが持ち合わせがなく困っている」などと言われ、女性はそのたびに100万円から300万円を融通してきた。勿論約束通り返してくれたためしはないのだが、惚れた弱みで（返してください）とは言えなかったという。