探偵日記

探偵日記 01月22日水曜日 晴

今日は、正午に新宿のヒルトンホテルで調査員と会い名古屋の調査の報告書を受け取りランチした。うなぎ屋に入り、調査員は一番安い(梅)を頼み、僕はひつまぶしというのを、(ひまつぶし)って頼んで笑われた。13時、同じヒルトンで別の依頼人と打ち合わせ。16時、麹町の法律事務所に報告書を持って訪問。1週間張込尾行調査を行ったがこれといった成果が上がらず忸怩たる思いで面談。弁護士の先生は、「これで十分です」と言ってくれたが、とうとう請求書は出せなかった。探偵は、時に、調査結果に不満を覚える。これは、調査員の責任でもなく、事務所の責任でもないが、依頼人の期待するところは重々分かっっているだけに内容の乏しい報告書は気が引けるのだ。あ~あ。と思いながら帰路についた。阿佐ヶ谷に帰って友人を呼び出しイタ飯を食べワインを1本飲む。さらにほろ酔い気分でカラオケスナックへ。
しかし、気分が高揚せず歌も中途半端で何となく消化不良のまま帰宅。

新宿・犬鳴探偵事務所 22

当時の探偵業界は2極に分かれ、一方は、殺到する依頼に応えることが出来ず、当然ながら質の良い調査は叶わず、中途半端な報告をされた依頼人が泣きを見る。そんな無茶苦茶な業界に、主管の警察庁も見るに見かね、(法律を作ってやらなければ)と考えたようで、協会にも「警備業法を下敷きにして勉強するように」というお達しがあった。
そんな中、犬鳴探偵事務所は電話帳に広告を出してはいたものの、都内の法律事務所や口コミ打はいる依頼で十分潤っていたので、丁寧な調査を行い、胸を張って報告出来ていた。
電話の女性が「今からでもいいか」と言うので、犬鳴は午後1時の約束をして事務所で待つことにした。たまたま、仕事を終えた調査員数名が事務所に居て、みんなを連れて伊勢丹でランチをして、事務所に戻ってきたときタイミング良く、くだんの依頼人から電話で、「今、新宿通りの四谷四丁目にいるが、どこを曲がればいいか」と言う。事務の多佳子が丁寧に道順を教え、電話を切った後「すぐに来ますよ。声の感じでは若い人です」と、言ったものだから、犬鳴は勿論のこと、他の調査員も大いに盛り上がって、通りに面した窓にへばりつき、(あ、あれかな)なんて、通行人の女性を見るたびに歓声を上げている。
すると、新宿通りを右折した白いベンツが事務所のほうに向かってきた。犬鳴も調査員も、まさかそんな高級外車で若い女性が探偵事務所に来るはずはない。と思っているのか誰もベンツに関心を持たず、犬鳴も、(まあ違うだろう)と、思っていたら、ベンツは事務所の前に停車。降りてきた女性は30歳ぐらい。白いワンピースを着て、いいとこのお嬢様然としている。だから、犬鳴も、事務所に横にある有名なうなぎ屋に来たんだろう。と思っていたら、間もなく受付で(いらっしゃいませお待ちしておりました)と言う多佳子の声が聞こえた。・・・・・・