探偵日記 04月19日金曜日 晴
家を出ると真向いの家のご夫婦が正装して立っている。数年前中古の家を買って引っ越してきた家で、夫の姿をほとんど見ない。奥さんと息子の二人暮らしか。と思っていたら、或る休日、駅のほうに向かって歩く夫婦(と思うのだが)を見かけ、な~んだ夫はいるのか。と思った。海外勤務か、単身赴任で地方にいるのか、或いは、事情があって別居しているのか。自分には関係のないことにもあれこれ想像をたくましくするのが「探偵」の性か。最近、その家を建て直すらしく、少し前から工事の人が解体を進め、今日が地鎮祭らしい。僕が外に出ると二人が振り返って「ご迷惑をおかけします」と言う。僕はいいえいいえと応じ、(楽しみですね)と言うと、二人とも嬉しそうだった。10時過ぎ事務所に着く。
詐欺師K 6
そんなことがあって、僕も競馬の面白さを覚えた。しかし、借金してまでの情熱はなく自分の小遣いの範囲で付き合った。それに、(他人が乗って畜生が走るんだ、信用できるものか)という気持ちがあった。しかし、そんなこと口が裂けてもKには言えなかった。KはNHKに入社したての頃、先輩に連れられて府中競馬に行き、初めてやった競馬で、その日、給料を上回る配当を得たらしい。そして狂った。そんなある夜、夢にパドックと馬が出てきて、どういうわけか一頭のの馬がメガネをかけていて、Kにウインクをしながら(今度は僕が来るよ)と教えてくれたらしい。まあ、そのくらいのめり込んで身上を潰したということである。今でもあるのかどうかわからないがギャンブル定休日というのがあって、そんな時は麻雀をやった。麻雀となれば一も二もない僕も率先して参加した。麻雀をやる人なら覚えがあるだろうが、時間の経つのが早く、あっという間に朝を迎える。したがって、金曜日の午後から始めれば日曜日の夜遅くまで、場合によっては月曜日の朝までやることもあった。そんな時、Kは、ノミ屋で競馬をやっていた。馬が走りだすと麻雀は中断する。僕の記録は寝ずに72時間やったのが最高で、徹夜なんか毎度のことだった。精算は帳面で後日におこなう。まさに、飲む、打つ、買うの三拍子が揃った人物だった。・・・・・