探偵日記

探偵日記 04月25日木曜日 曇り

先日までの予報では雨だったが、家を出た時は晴れ。事務所に着く頃は曇りに変わった。
今日は待ちに待った給料日。否、来て欲しくない日、しかし確実に、しかも寸分の狂いもなくやって来る。悪いことに、経理の担当者がケガで休んでおり、僕が早く出社した。
昨日、その手術に立ち会ったが、なんと、5時間以上もかかって、事務所にもこれず無為に過ごした。長い人生色んなことがある。思いがけないアクシデントもあれば、予期せぬ幸運が舞い込むこともある。だから面白いのかもしれない。

詐欺師k 9

結局汚名を着せられたまま退社したが、数日してkが僕のアパートにやってきて、「ふくちゃん悪いけど始末書を書いてくれないかな~」と言い、文言まで指示されて書いた。何とも理不尽で腹立たしいことだが、自分は気楽な独身、kは妻子もあるからと思い納得した。後年、そのkのおかげで17日間ブタ箱に入る羽目になったが、その事で彼との関係も自然消滅した。数年後、といっても僅か1年ぐらい後だが、歌舞伎町のバーで、その時の会社の専務と会った。kの立場もあるので(その節はご迷惑をおかけいたしました)と言うと、専務は、にっこり笑って「何言ってるんだ、僕は君があんなことをする人かどうかぐらい分かっていたよ」と、おっしゃってくれた。それもそうか、21歳の若造が自分の給料の3倍(今なら6~70万円)ものお金をあんなかたちで着服するなんて思いもしなかったのだろう。その専務がこの間テレビに出ていた。外食チェーンの社長として精力的に活動する姿を拝見した。やっぱりひとかどの人はどこか違うものだ。
それにひきかえその後のkの生き方は全く変わらなかった。昭和46年、僕が神田駅前のビルの1室で独立したことは幾度か書いたが、或る日の朝、駅前のスタンドでジュースを飲んでいたら目の前にkが居た。やはり二日酔いで冷たいものが欲しかったのだろう。お互い、やあやあ、ということになり近況を話し合ったが、kは駿河台下で会社をやっている由「ふくちゃん遊びにおいでよ」といわれ早速訪ねたが、詐欺をするために設立したインチキ会社で、その手口を聞いて仰天した。僕27歳、k38歳の時である。・・・・・