探偵日記 04月23日火曜日 晴
09時家を出て病院へ。女房の入院の手続きなどして、11時、事務所に着く。今日から数日間独身生活である。もう少し若い時ならば(よ~し)と張り切るところだが、いかんせん体がついてこないし、肝心の軍資金が乏しい。夕方雀荘に行って軍資金が稼げたならば。と、捕らぬ狸の皮算用。こんな時えてして負けるものだ。ならば、阿佐ヶ谷の何時もの居酒屋ということになろう。しかしまあ、それはそれでいいとしよう。それにしても、客(探偵のお客さんは依頼人)は自分勝手だ。「頼みたいことがある」と言われ少し遠いところまで出向いた。調査の申込書は書いたが、実際の調査について、(また改めて打ち合わせしましょう)ということになったが、以後、音沙汰なし。僕は主義として、こちらから積極的に勧めない。あくまでも、頼まれてからやる職業である。すると、その依頼人から電話があって返信が欲しい。らしいので、ぼ僕はすぐに連絡したが出ない。仕方なくメールするもいまだに返信は来ない。よ~し、今度頼んできたら断ってやろう。だけど、それも出来ない心優しい探偵なのだ。
詐欺師k 8
そうして新しい年が始まり、僕がこの会社にいるのもあと2か月余りとなったある日、kに呼ばれて、正式な契約寸前で僕が担当している会社に、どういう訳かkも同行することになった。上司としてお礼かたがたご挨拶に行くのだ。というのがkの言い分で、僕もそんなものだろう。と納得した。目指す会社の前まで来ると「ふくちゃん腹が痛くなった、そこの公園のトイレでしてくるから、悪いけど君一人で契約してきてくれ」と言う。まあ、下痢じゃあしょうが無いな~と思い、分かりました。といって一人で訪問した。無事契約が終わり申込金とやらの100,000円を受け取り、領収書ほかは後日ということで会社を出るとkがぼんやりと待っている。「集金できた?」と聞くからハイと応じると、その100,000白状を自分が処理しておくからという。何しろ上司であるから少しも疑わず渡した。
数日後、夕方会社の戻るとくだんの社長が専務と一緒に営業の部屋に入ってきた。先日訪問して契約を貰ったばかりの僕は、満面の笑みで(その節はありがとうございます)と挨拶。すると、社長が怒ったような顔で僕を指さし「専務こいつです」と言う。どうしたんだろう?と思っていると、専務はその社長を促して部屋を出た。その後、専務も何も言ってこないし、すでにみんな帰ってしまったので退社した。すると、駅に向かう途中の、いつもkなんかとさぼる喫茶店の前にkの元同僚が現れ、ふくちゃん、ふくちゃんと言って僕を呼びその喫茶店に連れ込まれた。するとk以下数名のグループが居り、k曰く「さっき会社に例の社長が来ただろう、何か言われたか」と聞くので、僕は(いや、専務と一緒に営業の部屋に来て僕のことを確認してすぐに出て行きました)とこたえると、実は・・と言って100,000円は自分が使いこんでしまった。と、白状した。・・・・・・・