探偵日記

探偵日記 12月20日金曜日 晴

今日も午前様になった。もう正確には21日土曜日、昼間は暖かくコートが邪魔になったが帰宅する頃はかなり冷えこんだ。
さすがに、師走も押し迫った金曜日、銀座は久しぶりに見る大賑わいで、特に7,8丁目は人また人、帰りのタクシーは大丈夫かな。と、案じていたが15人目で乗れた。それにしても毎晩飲み歩くのは疲れる。
ましてや、仕事がらみなのでこっちがはしゃぐわけにもいかず、会話も言葉を選びながら、加えてホステスさんの機嫌も取らなくちゃあならないからなおさらだ。
明日は阿佐ヶ谷の居酒屋経由馴染みのカラオケスナック。息抜きのできるまったりとした時間が楽しみだ。

ゆうこ 5

僕は慌てて居住まいをただす。といっても、相手にこちらの様子が分かるわけじゃあけど、仕事と聞いて豹変する気配を感じさせてはならない。落ち着いた声で(失礼しました。私が責任者ですがどのようなお問い合わせでしょうか)と言う。それで電話の向こうのお嬢さん安心したらしくテキパキと用件に移った。「私は会長秘書のSと申します。実は会長の直接なご依頼なのですが、私も詳しい内容までは存じていません。いずれ会長からお話があると思いますが、そちらにお願いする場合どのようにしたらいいのでしょうか」なるほど、会長さんの個人的な案件で秘書のお嬢さんに、探偵事務所を探すように命じたものと思った。僕は(かしこまりました。では御社に参りましょうか、それとも会長さんのご都合の宜し時間と場所をご指示いただければいずれへでも伺いますが)と、応えると、秘書さんは「しばらくお待ちください」と言い、1分後、00時に帝国ホテルのメインロビー横の喫茶店においで下さい。と、告げた。
わが国を代表するほどの企業の会長直々の調査依頼である。その日の午後、僕は心躍らせて指定された場所に赴いた。・・・・・