探偵日記 4月15日水曜日 晴れ後、大荒れになるとか。
昨日は司法書士の先生からの紹介で、新しいご依頼人に会うために埼玉県の銀行まで行った。なんでも、依頼人はその銀行の上客らしく、僕が行くと、支店長が出てきて、「手前どもの大事なお客様ですのでどうぞ宜しく」と言う。依頼案件は相続に絡む調査だったが、調査費用を説明したら「少し考えさせて下さい」とのこと、その後、1時間あまり世間話をしてお開きになった。僕の事務所の報酬規定は決して高いものではないが、その人の価値観の問題で、(高い)と感じる人も居れば、それでも調査をして決着を付けたい。と、思う人も居る。バブルを経験し、思う存分ご利益に預かった僕はもしかしたら少々感覚がズレているのかもしれない。反省しつつ事務所に戻った。ただ、あの人は必ず依頼してくるだろう。という予感はある。そのあと、赤坂のホテルで別の依頼人と会い、先刻の案件の数倍の仕事を頂いた。
Mという女 2
事務所で待機していると、ママからMちゃん新規のお客様よ頑張ってね。と言い、何時ものホテルの部屋番号を告げられた。時計を見るとまだお昼前である(こんな時間からどんな人かしら)と思いながらホテルに急ぐ。Mの所属する店のエリアは山手線の池袋から巣鴨で、特に、「大塚」駅周辺のホテルを縄張りにしている。客は、店(といっても客が来るわけではないが)に電話を入れて、馴染みの子がいれば指名するし、一見の場合、おおよその希望を言って、店側が待機中の女を吟味して送り込むことになる。今日のその客は(小柄な人がいい)とでも言ったのだろう。身長147センチ、体重38キロ。顔を見なければ小学生の4,5年生ぐらいの体型で、当然のこと、バストもヒップも極めて貧弱である。それでも人妻独特の色香があり2年目に入って指名も増えた。
指示されたホテルの部屋に行きチャイムを鳴らすと、そっとドアが開き若い男が立っている。(どうぞ)と招き入れられ部屋に入ってみると客はまだ背広をきちんと着ている。(サラリーマンか)ああ、そういえば昨日は給料日だ。少ない小遣いを握りしめ、恐る恐る来たんだろう。客としては低いレベルのように思えたが、朝一番の客としては楽である。朝から脂ぎった中年とか、何やら変なことを要求されそうな変態じゃあやりきれない。性風俗の世界に入ってまだ1年ちょっとのMだが、早くから男性経験が豊富にある彼女にしてみれば、ウオーミングアップが出来ず、体が慣れない午前中にあんまりしんどい思いはしたくない。床に正座して(Mと申しますよろしくお願いします)丁寧に挨拶し、客の洋服を脱がせにかかる。すると客は「ああ、いやこのままでいいんです。ただちょっとお話できれば)はにかんでそんなことを言う、多分自分より年下の男性をみて、思わず(可愛い)と感じた。---------------