探偵日記

探偵日記 01月10日金曜日 晴

今日は休み明けの最初の金曜日。この日を、手ぐすねを引いて待っていただろう銀座や歌舞伎町の女性からひっきりなしのメール。いい気なものだと思う反面(まあ、当たり前か)とも思ってしまう。後期高齢者の僕に恋するホステスなんているはずもなく、(下手な鉄砲も数打ちゃあ当たる)でダメもとの誘いであろう。それでも、夜友人や弁護士と食事した後、さてどこに行こうか。と迷ったら、一番誠実そうなメールの子の店に行くことになる。彼女たちの努力もまんざら無駄ではないわけだ。

新宿・犬鳴探偵事務所 10

マルヒは、代々井口家の小作人の家に生まれ、中学卒業後、庭師の見習いとして井口家に出入りしていたところを早苗の父親に見込まれ、逆玉で同家の婿になった人物だった。
彼女は井口家の一人娘で、父親は生前造園業を営む傍ら、有り余る土地に家作を建て、不動産の管理及び賃貸業も手広く経営。大物区会議員でもあった。そして、マルヒは家業の造園業を継いだが、所有する不動産の管理は早苗が差配していた。マルヒは生来のお人好しで、経営の際も無かったので、次第に先細りとなって、この頃は、都内の同業で規模の大きい会社に出入りする下請け業者に甘んじていた。不倫相手の女性はその会社に勤務するバツイチで子持ちの人だった。
犬鳴はすでにその程度の知識は得ていた。そして、婿養子で大人しいばかりの、と思っていた夫が、岳父が亡くなるや豹変し本性を現した。妻に対する物言いもぞんざいになり、夜遊びを始め、その結果、くだんの女性とねんごろになったのである。それでも最初のうちは口実を設け恐る恐るという感じだったのが、大ぴらに朝帰りするようになったらしい。・・・・・