探偵日記

探偵日記 01月09日木曜日 晴

昨日は荒天のためゴルフ場はガラガラ。コースに聞くと、予報のせいでキャンセルが相次ぎ10組だと言う。我がほうのコンペが3組だからあと7組、まさに借り切り状態で前後に他のプレーヤーは見当たらなかった。午後のスタートから3番ホールぐらいまで少し降られたが、あっという間に青空が見えるほどに回復。東京に着く頃はすっかり晴れ上がり夜は奇麗な月も見られた。
ただ、成績は振るわず、1日1時間程度のレッスンでは効果も期待できないことを思い知らされた。それでも、これまでのようなミスはほとんどなく、次につながる期待は持てた。阿佐ヶ谷で二次会のあと、もう一軒行き、最後は馴染みのカラオケスナックでお開きとなった。

新宿・犬鳴探偵事務所 9

犬鳴自身も、叔父の本心はともかく、自分がしっかりダンスを覚えようものなら、今でさえ女性問題が絶えないのに、ダンスを武器にますます派手に遊びまわるだろう。そうしたこともあって、その後ダンスと縁を絶った。犬鳴は身長165センチと小柄で決して美男子でもないが、とにかく女性にもてた。一つには、非常に口が上手く、加えて、まめである。犬鳴は常々女性にもてる秘訣はまめに限る。と思っている。いくら美男子でも大金持ちでも(くるならこい)という感じでは敬遠されるだろう。おしなべて女性は自尊心が強く臆病である。したがって、まずは(私はこの男に惚れられている)と、思ってもらわなくてはならない。次が波状攻撃であろう。特別な用事もないのに繁々と電話する。それも、決まった時間に電話するのが良い。例えば、毎日のようにお昼休みにかかってきていた電話がその日に限って無かったら(あれ、どうしたんだろう)と思うのが人情だ。しかし、相手に全くその気がなければ別だ。うるさくかかってきていた電話が無くなれば(ああ良かった)と、ほっとされるのが落ちである。
しかし、人というものは不思議なもので、毎日同じ時間に連絡があれば、気持ちのどこかに(待つ)意識が生じる。職場で同僚から「あら、今日は定期便ないのね」なんて冷やかされる。そして、あくる日もその次の日もかかってこなければどうだろう。もし相手の電話番号を知っていたらばかけたくなるのではないだろうか。
話しを元に戻そう。「ワンちゃんご飯食べに行こう」と言って犬鳴を誘った依頼人は犬鳴に異性として特別な感情があったわけではないし、犬鳴のほうも、金払いの良い依頼人として大事に接してきたがそれ以上の意識はなかった。何より、(依頼人と特別な関係になってはならない)という掟のようなものを守っていた。
依頼人の婦人、名前は井口早苗。これまでのやりとりで、彼女が世田谷区S町の大地主の一人娘で、マルヒの夫は婿養子。両親もすでに亡くなっており、二人の愛間に子供も無いこと。などわかっていた。・・・・