探偵日記 01月20日月曜日 晴
今日はゴルフのレッスンの日、9時、練習場に行き、1時間と少しコーチについておよそ200急くらい打って帰宅。シャワーをしてすぐに外出。地方に出張している調査員から芳しくない報告が入る。
我々の仕事の難しいところだが稀に困難な状況に陥ることがある。しかし、それは調査員の責任ともいえず、ましてや、依頼人に（基礎情報が違っていましたよ）と文句も言えない。それとは別に、事務的なことで重大なミスを犯してしまった。こっちのほうはひたすらに謝罪するしかない。というわけで、滅入ってしまい早々に帰宅した。
新宿・犬鳴探偵事務所 20
この頃の業界全体としては、警察庁の発表で、全国の興信所や探偵事務所の数はおよそ5千社といわれた。首都東京が600社余り、しかしこの数字はにわかには信じがたく、実際にはもっとある。とも言えるし、（そんなにあるだろうか）とも言えた。というのも、大体、探偵事務所は、一人ないし数人で営んでいるものが多い。大都会の東京ですらそうなのだから、地方ではその傾向がさらに強く、例えば、クリーニング屋の主人が探偵にかぶれて、二足の草鞋を履いている。なんてことも良くみられる現象で、逆に、東京など、1社がダミー会社を作って、広告合戦を展開していた。そんな実情もあって、お役人が机上で調べた数字は実態にそくしていない。少なくとも犬鳴はそう思っていた。
移転に伴い、事務所開きをしたこともあって、業界における犬鳴探偵事務所の評価はいやがうえにも上昇し、協会内で、大手の1社として認識され、理事会での発言も重要視された。とうのも、事務所の移転を決めた犬鳴は、同時に、調査員の採用も一気に行い、事務の人間も含めて30人余りのスタッフが客を迎えたからである。さらに、日本調査業協会の会長が、全国の会合などで宣伝してくれたこともあって、たとえば、 調査の必要があって、遠く鹿児島の同業者に電話して、（東京の犬鳴ですが）といえばすぐに通じたし、中には、上京の際にわざわざ挨拶に来てくれる者もあった。
ちょうどその頃、アメリカ西海岸のロサンゼルス市警のOBでかの地で探偵事務所を営んでいる人物と面識が出来、その事務所と提携したほか、韓国の元警察関係者が経営する事務所とも相互調査を行う契約が成立した。
時はバブルの真っ最中、ひっきりなしに入って来る調査依頼に多忙を極めていた犬鳴探偵事務所に、或る日、こんな依頼が舞い込んだ。・・・・