探偵日記

探偵日記 01月25日土曜日 曇り

07時15分食卓に着く。僕は前夜どんなに遅くても毎朝決まった時間に朝食を摂る。昔、日本中を泣かせたドラマ「おしん」を見ながら食べるのが日課である。おしん役は田中裕子から乙羽信子に代わったが、おしんに降りかかる苦難の連続は、やりきれない思いで見る。それが終わるとNHKの朝ドラになり、天気予報までおよそ45分かける。今日はその後、ゴルフの朝練に行き、10時に改めて家を出て、帰宅のほうに内偵に行く。やはり聞き込みは老練な僕のほうがまだ巧い。と、自負している。それなりに成果が上がり、気持ち良く雀荘へ。最近負けが続いていたが今日は少し取り返した。
夜はお定まりのカラオケスナックで馴染みの常連と楽しいひと時を過ごし、23時帰宅。

新宿・犬鳴探偵事務所 25

しかし、この看護婦さんもすごい人である。妻子のある男性と深い仲になった女性は、たいていひっそりと暮らし、自分の存在はひた隠す。なぜならば、二人の関係が男性の奥さんに知られた時が二人の別離の時だからである。でも、それは犬鳴の古い考えであって、最近の女性は我慢しないらしい。それにしても、相手の家庭に押しかけ、妻に向かって出て行けは無いだろう。そのことを聞いただけで犬鳴はこの女性を憎んだ。探偵というものは不思議なもので、依頼人と同じ心境というか、立場を同じくする傾向がある。だから、その女性の仕草は(許せない)と思ってしまうのだ。依頼人は言う。「この間の日曜日、家族で食事に行こうと思い車をガレージから出したら、あのソバージュが突然現れて、助手席に乗っていた私を引きずり出そうとしたんです」と。不倫相手の女性は家の前で張り込んでいたらしく、家族揃って出かける様子を見て逆上したようだ。依頼人に向かって、「そこは私の席だだから」と大声でわめき、子供たちが泣き出す騒ぎになったという。
犬鳴は聞いた。(その時ご主人はどうなさったんですか)依頼人はその場面を改めて思い出したのか、美しい顔を歪め、「あのバカ亭主怖がって、私と子供に降りてくれって」私も子供に危害を加えられたら。と思って、家に入りました。その日、マルヒはその女性を乗せて走り去り、とうとう、その夜は帰宅しなかったらしい。・・・・・