銀行預金 1

探偵日記 6月20日木曜日雨

昨日は地方に出張したので事務所に来なかった。今日は、併設している「東京調査業協同組合」の臨時総会なのでサボるわけにもいかず、午後1時、新宿駅西口に有る万世で、(パーコーメン)を食べて出勤した。ドリフターズじゃないが全員集合。暇な探偵事務所だ。同業者に聞くと「まったく電話ががならない」とのこと。情けないがほっとする。今日、中国から依頼人が帰国する。明朝ぐらい呼びつけられてまた怒られそう。依頼人の気持ちは痛いほど分っているが、探偵にも出来ることと出来ない事がある。G13の登場が待ちどうしい。
今日から宍戸ヒルズで日本ゴルフツアー選手権が開催されている。トップが韓国人の選手で、松山は5アンダー、我が石川遼クンは5オーバーで予選通過が危ぶまれている。どうしてこんなになっちゃったのか?マスコミにちやほやされすぎたか、コマーシャルに出すぎか、はたまた、彼の限界なのか。ファンの一人としては淋しい限りである。

銀行預金 1

一昨日、初老の男性の声で「ちょっと頼みたいことがあるのでそちらに行きたい。ついては住所を教えてくれ」と言う。その前の日、やはり中年の男性から僕の携帯に電話がかかり「福田さんでしょうか」と言う。僕は何の疑いも抱かず(ハイ)と応えた。するとその男性は「あの~予約したいんですが、」と言う。僕がエッと言うと、男性は「あの~そちらはお店ではないんですか」と聞く。人の携帯に電話して、出た人間の名前を確かめておいて、(予約)も無いもんだ。恐らく、携帯番号と、福田の関連を確認したかったのだろう。それにしても下手な内偵である。多分男性は僕の職業を知らなかったのではないか。

そうした翌日の依頼の電話である。僕は少々嫌な気がしたが、他人に調査されるような心当たりもないので、(どうぞ)と言って待つこと1時間余り、約束どおり、その依頼人はやって来た。電話で感じた印象どおり初老の男性で、すでに現役を引退した元会社員という風情だった。応接室に通し名刺を差し出すと、「私は名刺が有りません」と言って、新宿区の住人を証明するカードを見せる。とりあえず変な依頼人ではなさそうなので話を聞くことにした。依頼人曰く「私はずいぶん前、住友銀行と、三井銀行に普通預金を開いたのですが、その後転居したりで通帳を失くしてしまいました。貴方のところで、調べてもらえないか」というものだった。今は三井住友になっているからもうだいぶん前のことなのは分る。更に依頼人が言う。「最近になって、その口座に年に2回位の割合で送金がなされていることを知りました」お年を聞いてみると79歳だと言う。(送金って何処からどんな理由でですか)僕が聞くと、依然勤めていた会社からの慰労金だとの答え。

僕は、これは事務所の仕事ではないな。と思い、ご自身がその支店に赴き、(通帳を失くしたので再発行をして下さい)と頼み、晴れて預金通帳が手元にきたら、今度は(印鑑を失くしたので改印届けをしたい)と言ってみてください。銀行は長い間動きのない口座で、連絡の付かない人の場合、もしかしたら、(別段預金)扱いにしているかもしれず、法律によって「無効」になっているかもしれない。また、面倒臭がって冷たい応対をされるかもしれないが、その時は又いらっしゃい。と、懇切丁寧にご指導して差し上げた。

依頼人は、それでもなお僕に頼みたかったようだが、果たして残高が幾らあるか分らない。探偵社に依頼すれば、氏名、年齢、生年月日、住所、などで分ることもあるが、相応の費用もかかってしまう。その昔、といってもそんなに大昔ではないが、その道の専門家が居て、こうした個人情報を得られる時期もあった。今は、「個人情報保護法」のせいで困難になったが、調査会社としてはずいぶん重宝したものだ。「お金は一銭もありません」などと、木で鼻をくくったような態度で逃げようとする債務者の預金残高を調べ、弁護士が差し押さえして回収できた。なんてこともある。なんて考えているうち、或る事件を思い出してしまった。---------------