探偵日記 3月11日火曜日晴れ
昨日は素行調査に参加して酷い目にあった。厳寒の路上で2時間半、俗に、(立ち張り)になって、凍死するかと思った。最後のほうは、眠気までもよおし、ああ、凍死する時は眠くなって気持ちがいい。という説が納得できた。マルヒは某大手企業の部長さん。依頼人から、「今日は怪しい」と言われ張り込むことになったのだが、勤務先が大きなビルの中にあって、出入り口が多いうえに、セキュリティが堅固で車も停めて置けない。と言う訳で、立って張り込むことになった次第。結果は空振りで遂にマルヒを捕捉出来なかった。写真を預かっているものの、(もしかしたら見逃したか)と思って、今朝、調査員を連れてマルヒの出勤時を見に行った。8時58分、眠そうな顔で出てきたマルヒを見て胸をなでおろす。この男なら我々が張り込んでいる時間帯に出ては来なかった。
今日は、そんなわけで、家を7時に出て現場へ。10時に事務所。
今日3月11日は、三年前東北地方で起きた大震災の日。その日、その時刻、僕は、港区赤坂のキャピトル東急ホテルの1階ロビーで、依頼人と面談していた。今まで経験したことのない揺れに(俺の人生もこれまでか)と思ったものだ。赤坂から新宿一丁目の事務所まで歩き、その後、歌舞伎町の雀荘で時間を潰し、調査員の車で帰宅したが、何と、新宿から阿佐ヶ谷まで4時間以上かかったことを覚えている。偶然だが、今日は、その日と同じ服装で靴も同じ、ただ、コートは着ていなかった。