探偵物語 15

探偵日記 7月21日月曜日 晴れ

今日は長女の娘、すなわち僕のたった一人の孫「美佑」(みう13歳)の誕生日。海の日に生まれたから。というわけでもないだろうが、我々の年代の者からすると少々変わった名前だな~。と思うが、親心で命名した名前だからジイジがいちゃもんつけるわけではない。岡山県倉敷市の小学5年生の女の子が無事保護された。49歳の男の犯行とか。女の子は、まだ11歳というがちょっと雰囲気のある可愛い子だからターゲットにされたのだろうが、何処にも変質者はいるものである。そして、今回逮捕された男も数年後娑婆に出てくるだろう。否、腕のいい弁護士がつけば執行猶予だってありうる。そして世間はこんな輩がうじょうじょ居ることになり、個人情報保護法と相まって魑魅魍魎の人間社会が形成されてゆく。どこかの国では性犯罪者はおちんちんを切られるそうだが、仮にそんな法律を作っても犯罪は無くならない。石川五右衛門が「浜の真砂が尽きるとも世に盗人は・・・」と言ったように、尽きぬことの無い人の欲望は果てしない。あれほど大きな社会問題となり、罰則が重くなっても、まだ酒を飲んで運転するバカが居る。要するに、幼少時からの現在の教育が間違っていることに、政治家も国民も気付くべきだろう。

探偵物語 15

公私共に紆余曲折があり、昭和55年ごろ新宿区下落合のマンションに暮らしていたが、正面玄関のまん前に「ジュエル」という洒落たスナックがあった。その店で色んな人と出会うのだが、悪徳金融会社のTさんとも会い、その流れで、若い頃、プロゴルファーを目指したというマスターの手ほどきでゴルフと出会い、以来、35年間麻雀と共に趣味の一つとなった。やがて、「ジュエル杯」というコンペも開催するようになり、当時隣のマンションに住んでいた某歌手も参加したりで多いに盛り上がった。肝心の探偵業も順調で、経営の才に乏しい僕は四苦八苦しながらも何とか事務所を維持できていた頃だった。

僕の2冊目の本に書いた「キャバレー」の案件もその頃受件した調査依頼だが、こんな変てこな依頼人にも遭遇した。僕が、珍しく事務所に居ると電話が鳴った。「あの~そちらは探偵事務所さんですか」と聞く。どうせNTTのタウンページを見て電話してきたのだろうが、依頼人の常で、自分がかけた先を承知の上でも改めて確認する。(そうです)短く応えて次の言葉を待つのが僕の常である。すると、「そうですか、ところで、お宅は探偵事務所って分るような看板は出てますか」と聞いてきた。妙な質問だな。と思ったが、稀に、周囲にそれとはっきり分るような場所への出入を躊躇する人も居る。僕も学生の頃、さんざん質屋さんの世話になったが、出来れば「質屋」の看板が無いほうがいい。と思ったこともある。幸いというか、当時の事務所には目立つような看板や表示をしていなかった。(いいえ目立つようなことはしていませんが)と言うと、先方は「ああ、それは良かった。ではこれからすぐに参ります」と言って電話を切り、実際に数分でやって来た。随分早いな。と思って聞くと、ひと目で高価なものだと分る和服姿の婦人は「ええ、お宅のすぐ前のホテルに居たものですから」と言って、上品に顔をほころばせた。ーーーーーーーーーー